TSHレセプター抗体(TRAb)のページを更新
- TSHレセプター抗体(TRAb)は甲状腺細胞膜上にあるTSHレセプターに対する自己抗体で、甲状腺を刺激する抗体(甲状腺刺激性レセプター抗体、TSAb)とTSH作用を阻害する抗体(TSH作用阻害抗体、TSBAb)に分類されます。かつては測定試薬中の標識されたTSHのTSHレセプターへの結合を阻害する程度を測定していたことから、TSH結合阻止抗体(TBII)とも呼ばれていました。
TRAbはバセドウ病における甲状腺機能亢進症の原因といわれ、TRAbがTSHと同じように甲状腺を刺激することにより発症する自己免疫性疾患であることが判明しています。
ところで、甲状腺機能亢進症はバセドウ病だけでなく、亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎などがあり、特に無痛性甲状腺炎とバセドウ病は臨床症状や甲状腺ホルモン検査だけでは鑑別しにくく、バセドウ病治療で使用される抗甲状腺薬は重大な副作用が報告されていることから、日本甲状腺学会では「甲状腺疾患診断ガイドライン2010」でバセドウ病の診断鑑別にTSH、FT4、FT3とTRAb検査を行うとしています。
また、TRAb値はバセドウ病の疾患活動性と相関を示し、治療経過中に変動するため、バセドウ病の寛解判定指標の1つとして有用です。
従来、TRAb測定はレセプター結合アッセイにより、TRAbによるTSHレセプターと標識TSHとの結合阻害率(%)からTRAbを測定していました。第一世代では液相中で反応させる1ステップ測定法、第二世代ではTSHレセプターを試験管やプレートに固相化した2ステップ測定法で、抗TSH抗体やHAMAなどの干渉物質を排除して高感度化されました。
第三世代では標識TSHの代わりにバセドウ病患者由来TSHレセプターモノクローナル抗体を用い、さらに感度・特異度・再現性に優れ、臨床診断の信頼性が増しました。
これまで、TSHレセプター抗体は結合阻害率(%)で報告する方法が一般的でしたが、WHO標準血清が導入され、国際単位IU/Lで検査値を表示する定量法となり、バセドウ病での治療効果のモニタリングに有用です。 <出典:日本リウマチ学会>