中枢性免疫寛容(central tolerance)のページを更新
- 中枢性免疫寛容(central tolerance)とは、免疫寛容の一つであり、自己抗原を異物として認識しない能力を獲得するしくみのことである。
胸腺におけるT細胞の成熟は、「正の選択」と「負の選択」という2段階で行われる。骨髄から中枢リンパ管である胸腺に移入してきたT細胞の前駆体は、胸腺で分化・成熟する過程で「正の選択」により異物を認識できる能力を獲得し、「負の選択」により自己を異物と認識しない能力を獲得する。この「負の選択」の過程が中枢性免疫寛容である。
しかし、中枢性免疫寛容で全ての自己抗原に免疫寛容が得られるわけでは無い。自己抗原に反応するT細胞が、末梢組織で自己を攻撃しないしくみも必要である。そのしくみが、末梢性免疫寛容である。
なお、T細胞だけでなく、同じく免疫制御の中心となるB細胞においては骨髄で中枢性免疫が行われる。 - ● 正の選択
- 胸腺内では遺伝子組み換えにより様々なT細胞受容体を発現したT細胞が産生される。しかし、T細胞が免疫機構を発揮するには自己主要組織適合性遺伝子複合体(major histocompatibility complex;MHC)分子と結合して異物と認識する必要があるため、MCHに全く結合できないT細胞は死滅していく。このしくみにより、異物を認識する能力をもったT細胞のみが成熟する。
- ● 負の選択
- 正の選択を受けたT細胞のうち、次は自己を攻撃するT細胞を除外する必要がある。胸腺内では本来胸腺には出現しない自己抗原も含めて様々な自己抗原が発現しており、自己抗原と強く反応するT細胞は死滅してしまう。このしくみにより、自己抗原に反応しないT細胞のみが成熟できる。