新型コロナウイルスが連日マスコミを賑わしている。このウイルスの特徴は発熱や咳の他極度の倦怠感に襲われるとのことであるが、一方感染が確認されてもこれらの症状が出ない人も結構いるようであり、大きな謎だ。
我々の周辺には様々な病原菌が無数にいるが、それでも病気にならないのは自身の体に備わっている素晴らしい免疫システムのお蔭た。免疫システムは体内で病原菌や異常な細胞を認識し、それらを殺滅することによって私たちの体を病気から守ってくれる強力な防衛機構であり、生まれつき備わっているものと、後から人の手によって与えられるものがある。
新型コロナウイルスは、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの仲間だそうだが、突然変異しているため人類が初めて遭遇するウイルスとのことであり、この免疫システムが上手く対処できないからだとの話だ。
MERSやSARSは重症化することで恐れられていた。今回のウイルスも高齢者や持病持ちの人は重症化するらしいが、感染しても発症しない人が居るとはどういう現象であろうか。発症しないのは一言で言えば抵抗力があるからであろうが、この抵抗力はワクチンのように人為的に与えられたものでは無く、生まれつき備わっている能力であろう。
健康な人や子供に無症状な人が多いと言うことは、新型コロナウイルスの生命力はMERSやSARSに比べてあまり毒性が強くないようだ。コロナウイルスは野生動物の体内で長年住処を確保していたようだが、何かしらの切っ掛けで人間にも住処を見出したようだ。折角見出した新天地で長く存続するためには、人間に余り害を及ぼさない方が得だとの判断があるのかも知れない。
人間にとって発症しないのは大変結構であるが、発症しない保菌者は無意識のうちに他の人に感染させる恐れがあるとのことで、新型コロナウイルスにとっては、仲間を増やすための絶好の戦略であるのかも知れない。
元々ウイルスは細胞を持たず、他の生物の細胞の中でしか生きられないと言われ、知性などあろうはずが無いが、自然には不思議なことがいっぱい残されており、もしコロナウイルスを統括する神様もどきがいたら素晴らしい戦略を考え出したとSF小説が書けそうである。
さて、英国のエクセター大学の公衆衛生を専門とする講師、バーラト・パンカニア氏によれば、突然変異によってウイルスの感染力が強化される傾向はないということだ。SARSの研究では、突然変異は実際、感染能力の縮小をもたらしたことが示唆されているとのことだ。そして、豚インフルエンザが終息し、2005年以降にSARSの発症例が見られないのはそのためであると説明し、新型コロナウイルスもこのような運命をたどると予想しているとのことだ。
生物の進化は突然異変の積み重ねであろう。常に突然異変が感染能力の縮小をもたらすとは限らないと思うが。新型コロナウイルスは自然淘汰される運命であろうか。
新型コロナウイルスに対する治療薬は現時点では無いが、何とか治癒した場合、体内のウイルスは完全に死滅したのであろうか、それとも人間の免疫力によって単に押さえられているだけなのであろうか。自然には分からないことが沢山ある。2020.02.22(犬賀 大好-576)