国の借金である国債の発行残高は2023年度末には約1,068兆円に上ると見込まれ、地方政府の借金である地方債の発行残高の約200兆円を合わせるとその総額は約1300兆円となるそうだ。
2,3年前までは、プライマリーバランスを黒字化する、すなわち歳出を歳入より低く抑えると言う財政健全化の掛け声はあった。その目標年度は度々先送りされたが、曲りなりにもその意識はあったが、近年その声すら聞こえてこない。達成不能な目標は立てない方がよいとの諦めであろうか。
岸田首相の経済対策の5本の柱の中にも財政健全化の話は出て来ないどころか、景気浮揚と称するばらまき経済対策の話ばかりである。国の借金の増大は、負の遺産として子供達に残すことになり、子供達に明るい将来を示すことが出来ない。何が異次元少子化対策かと言いたい。
さて、先日の内閣改造は政権の支持率向上につながらなかったことから、この経済対策を政権浮揚につなげ、それを機に、岸田首相は秋にも解散・総選挙を検討する可能性があるとのことだ。残念ながら選挙で国民受けするのはばらまきだ。9月末に期限を迎えたガソリン補助金、電気・ガス代補助金の年末までの期間延長を既に決めている。補正予算で赤字国債の発行で財源を確保したうえで、さらなる延長を検討しているとのことだ。今更膨大な赤字を更に増やしたところで問題無しとしているのだろう。
さて、負の遺産は借金ばかりでない。全国の多くのインフラを高度経済成長期に一斉に整備した日本ではその老朽化問題が発生しているが、これも隠れた大きな負の遺産である。国土交通省は今後インフラの老朽化による悪影響が出はじめ、これらの保全には膨大なコストがかかるとしている。インフラに不具合が生じてから修繕を行う事後保全の方法で保全を行う場合、2048年までに10.9兆円~12.3兆円の維持管理・更新費がかかり、インフラに不具合が生じる前に修繕やメンテナンスを行う予防保全を実施した場合、2048年までにかかる維持管理・更新費は5.9兆円~6.5兆円と約47%も抑えることができると見積もられるそうだ。
予防保全の方が半額で済み、こちらの方がよいと誰にも分るが、問題は資金だ。インフラの点検・メンテナンスは、限られた財源の中で少しでも多くのインフラを維持していくことが必要だが、インフラの種類、数は驚くほど多い。上下水道から公立病院まで、無数にある。限られた財源の中で少しずつやるしかないが、予防費用約10兆円も国の借金1000兆円からすれば僅か1%に過ぎず、逆に国の借金が如何に大きいかが分かる。
この大きな借金も日銀がお札を刷れば問題が無いとほざく人もいる。確かに安倍政権下で異次元金融緩和と称してお金を刷り増ししたが、これまで大した問題が生じなかった。現在、超円安とか異常な物価上昇で世間が騒がしいが、これも異次元金融緩和の影響だと思われてならない。悪影響はこれから本番だろう。2023.10.04(犬賀 大好ー951)