今年10月31日から11月12日まで、英国で国連気候変動枠組条約(UNFCCC)を批准するすべての国が参加する会議(COP26)が開催されている。地球上の気温上昇を抑えるために、1)石炭の段階的廃止の加速、2)森林破壊の削減、3)電気自動車への切り替えの加速、4)再生可能エネルギーへの投資奨励が議論される予定だそうだ。
これに先立ち、10月26日、国連環境計画(UNEP)は各国が掲げる温室効果ガスの削減目標を達成したとしても、今世紀末には世界の平均気温が産業革命前から2.7℃上がるとする報告書を公表した。パリ協定では気温上昇を、出来れば1.5度以内に抑えるとした目標を立てているが、厳しい現実を突きつけられたわけだ。
日本は菅前首相が昨年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを打ち出した。これはパリ協定の目標に沿う対策であったが、今回のCOP26では更に厳しい条件が科せられるであろう。
政府は10月22日「第6次 エネルギー基本計画」を閣議決定した。COP26では温室効果ガスを大量排出する石炭火力は先進国で全廃が求められているが、日本は2030年度比率を26%から19%に縮小したものの、ゼロへの道筋が描けていない。
自然エネルギーの分野ではかって太陽光発電で世界をリードしていたが、電力会社の自然エネルギーへの変換意欲が無く、最近では中国に遅れをとっている。太陽光発電の最大の欠点は発電量が自然に左右されることであるが、米国のテスラ社はPowerwallと称する家庭用蓄電池システムに挑戦している。太陽光発電や他の系統からの余剰電力を蓄電し、電力網の停電を検知すると、自動的に自宅へ電気の供給を開始する夢のあるシステムである。
日本の電力会社は原子力発電にしがみ付き、新しい分野への挑戦を避けている。原子力発電は地球温暖化対策の面では打って付けであるが、東日本大震災以降世界的にも嫌われ者になっている。電力各社はこれまでの夢が捨てきれず原子力発電の再開を望んでいるが、核燃料サイクルはとっくに破綻しており、また核のゴミの最終処分場も決まらず、明るい将来を見通せない現状である。
先述のエネルギー基本計画でも原発は従来目標の20~22%を維持するとしており、再稼働が10基にとどまり、これを達成するには30基程度の再稼働が必要となるが、地元住民の反対等で実現は困難な状況だ。
菅前首相が掲げ、岸田新首相も後を継ぐとみられるグリーン成長戦略では温暖化対策を経済成長につなげるとしているが、将来に対する夢と希望のないところに人材は集まらない。将来展望の無い原子力にさっさと見切りをつけ、夢と希望のある成長戦略を立てるべきである。2021.11.03(犬賀 大好ー760)
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