東京オリンピック・パラリンピックの開催が1年延期され2021年7月23日の開幕と決まった。安倍首相は自らが延期を提案したことで、中止という最悪のシナリオは回避できたと喜んでいる。1年遅れても開催出来れば、追加費用分の出費だけで済まされるが、中止となればこれまでに期待していた経済効果が捕らぬ狸の皮算用となってしまうからだ。
3月19日、関西大学の宮本名誉教授が、延期の場合の経済損失は約6408億円、中止の場合は約4兆5151億円となると発表し、中止の場合の損失の大きさを裏付けた。なお1年間延期された時の経済的損失は、①大会延期にかかる諸費用と、②大会延期により失われる経済効果の合計だそうだ。
①の諸費用は、・競技場、選手村などの施設の1年間の維持、修理、管理の費用の約225億円、・大会に関係する各種スポーツ団体の五輪に合わせて再び準備する1 年間の必要経費の約3900億円、・その他の広報、連絡関係の経費などの約100億円、だそうだ。これらの損失費用は根拠が明確であるが、後者の②大会延期により失われる経済効果の方は、実体がよく分からない。中止に伴う外人観光客の減少による損失もその一つであろうが、1年後に開催されれば大半は取り戻せるのであろうから一時的な損失に過ぎず純粋な損失は①のみであろう。
さて、問題は大会中止の場合の損失だ。そもそもオリンピックの日本開催の最大の目的は経済の活性化だ。東京都が2017年に発表したデータによると、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関連する経済効果は、オリンピック招致が決まった2013年から大会終了後の2030年までの18年間で約32兆円だそうで、政府が全面的に応援する筈だ。
さてその内訳は、大会開催の2020年までが21兆円、大会終了後から2030年までが11兆円だそうだ。1年延期が決まったのは、つい先日であるので、これまでに21兆円に近い経済効果があったのであろうか。本当の所はよく分からない。
経済効果は直接的投資と付随的効果の二つに分けられるそうで、直接投資分は新国立競技場等の設備費が大半を占めていると思われ、これらは建設業界を潤していたと見られるので、中止となっても建設業界は損をしない。
大会開催の2020年までが21兆円と見積もった経済効果においても付随的効果の方が直接投資より広い分野に及びかつ金額も圧倒的に大きいと思われる。この中にも付随的な効果を期待して投資をし、開催時に一気に回収しようとした金もあるだろうが、回収時期が1年延びたと思えば、まだ我慢できるだろう。
さて、1年延期で損失を最小限に抑えたつもりであろうが、現在コロナウイルスが全世界で猛威を振るっており、来年無事開催できる保証はない。もし開催できない場合は、日本は更に1年延期を主張するであろうが、延期に伴う諸問題は更に大きくなり、中止となる公算が大きい。
2年後の中止となるより、今から中止と決定した方が最小限の損失で済むと思われるが。2020.04.15(犬賀 大好-591)
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