日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

自動運転車の試験中事故は目を瞑るべきか

2018年04月04日 09時23分35秒 | 日々雑感
 米国の電気自動車メーカーのテスラ・モーターズが、2015年10月に発表した半自動運転機能の車は、従来の運転支援機能に含まれる”自動ブレーキ”や”車線キープ”などに加え、”前方車両の追い越し”なども自動で出来ると評判である。この車は名前が示すように、半自動であり、あくまでも運転者を支援する機能付きの自動車であり、運転する者はハンドルから手を放しても、安全確保のためにハンドル近くに置き、常に緊張している必要がある。

 ところが、この半自動運転車が2016年に公道で試験運転中に道路を横切ろうとした大型トレーラーに衝突して運転者が死亡する米国初の事故を起こしてしまった。

 2017年、この死亡事故に関する調査結果を、米国家運輸安全委員会が発表した。先駆的な自動運転による世界初の死亡事故に対し、車両自体に欠陥はなく、運転者がハンドルに手を添えるようにとの警告を無視していたという判断で、責任は運転者にあり、メーカーには過失なしの裁定が下されたそうだ。

 テスラ社はトレーラーの白色の側面が、明るい空を背景としていたためにトレーラーを認識することができず、ブレーキが作動しなかったと、その原因として挙げている。しかし、この車はカメラだけではなく、電波でも前方監視も行っていたとのことだ。電波は激しい雨、濃霧や降雪時の走行時に、前方車両を正確に検知して安全に対応する役割を果たすため、必需品でもある。白色の側面が認識できなかったとの言い訳はおかしいとの疑問も呈されている。

 この疑問に対し、光にしても電波にしても、側面からみた車両を車両だと認識するアルゴリズムが、現代のほとんどの運転支援システムには組み込まれていないからだとの指摘もあるが、こちらの指摘は十分納得が出来る。

 もともと現在の運転支援システムは、クルマの追突を防ぐための自動ブレーキの機能から発展したものだそうだ。このため、後ろから見たクルマを認識する機能が重視されている。次に歩行者を認識する機能、自転車を認識する機能などを加える形で発展してきたそうだ。

 クルマの側面に衝突する事故はめったに起きないため、この機能は二の次になっていたのかも知れない。最近、大勢の人の中から特定の人間の顔を瞬時に認識することが出来る等、画像認識するアルゴリズムは急激な進歩があるそうだ。従って、クルマの側面認識等、やる気になればすぐにでも可能であろう。

 自動車の側面認識の機能が備わっていなかったのが、本当であるならば、メーカに過失がなかったとの判決は余りにもメーカ寄りである。メーカは予期せぬ事故の原因を洗い出すための走行試験との位置づけであろう。死亡した運転者は技術を過信しすぎていたのかも知れない。自動運転機能は将来の自動車を制する重要な機能であるため国家レベルで育成する必要があり、裁判官の忖度があったのかも知れない。

 また、配車サービスの大手である米ウーバーテクノロジーズが米アリゾナ州で試験運行していた自動運転車が今年3月18日夜、歩行者をはね死亡させていたことが明らかになった。今回の事故は、運転手がハンドルを握らない完全自動運転車の事故であり、歩行者が犠牲になった事故は今回が初めてとみられている。今回の事故の責任が何処にあるか、裁判の成り行きが注目されている。

 警察庁によると2017年の交通死は、過去最少の3694人だったそうだ。これだけの人が亡くなっていても、自動車の利便性はそれにも増すから、自動車を規制する動きは一切ない。自動運転車の利便性も今までの自動車以上と容易に想像できる。開発途上における多少の犠牲は目を瞑るべきかの知れないが、責任の所在と犠牲者に対しては十分な補償が無くてはならない。

 日本でも自動運転車の公道における実験が始まっているが、事故を起こした場合の法的な扱いに関しては未整備のままだ。政府は自動運転車の本格導入に向けたルールづくりに乗り出している。まず運転記録装置の設置を義務付けることを検討するらしい。自動運転車が事故を起こした場合、原因が運転手かシステムの問題かを判別するためには、絶対必要な装置であろう。
2018.04.04(犬賀 大好-430)

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