ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

5月24日 ライモンダ

2007年06月07日 | Weblog

欧州から旅行でいらしたボリショイ好きの方にライモンダの舞台の感想を寄稿頂きました。

写真は5月24日でなく2005年12月17日に主役は同じで管理人が見たライモンダのカテコです。1年半年ほどのずれがありますし主役以外はMEMBER違うかも知れませんがこのカテコは今までUPしていませんのでご容赦。

5月24日 ライモンダ

ライモンダ:マリア・アレクサンドロワ

ジャン:ニコライ・ツィスカリーゼ

アブデラクマン:ドミトリ・ベロゴロフツェフ

ロシアでは一番人気の男性ダンサーであると聞いているツィスカリーゼを、モスクワで直に見れるというのはこの上なく贅沢のように思えました。

噂どおり、出番の最初からヘルメット(冠 ?)を付けて出てくるというのは、彼らしいチョイス。

アレクサンドロワとのコンビは、雰囲気的にお似合いでした。ただ、この日のアレクサンドロワは、回転での軸が舞台向かって右側に危なっかしいほど傾くことの連続で、ツィスカリーゼのサポートが雑なのか、2幕目は特に目立ちました。それに伴い、一幕で笑顔でいた彼女の華やかな笑顔も消え、3幕の終わりぐらいまではずっと強張った表情となってしまいました。調子がわるかったのでしょうか?いつもは元気印の彼女であるがだけに、強張った表情で踊られると非常に暗い舞台となります。

しかし、ライモンダは特に女性にとっては技の連続で、前幕をこなすのはハードではあります・・・ 私としては、気合を入れて力んだ技を披露するよりは、むしろ良い表情を崩さないでいて欲しかったですが。

ツィスカリーゼは、跳躍&回転ともに調子が良く、白いマントの自分の姿も大層気に入っているのか、舞台を楽しんでいるように見えました。

ただ、この日特筆すべきは何と言ってもアブデラフマン役のベロゴロフツェフです!

非常に幻想的な、美しい場面から突如現れるアブテラフマン。その力強く男性的な歩調や、ライモンダに魔術をかけそうなほどの熱い目、手先の表現。存在感に圧倒され、舞台は一気に彼のものとなりました。最近膝を痛めていたと聞いていたので心配でしたが、彼の久々に見た「魂を込めた」全身を捧げる舞台に観客は酔いしれました。格技的なジャンプ、民族舞踊のようなテンポの速い音楽に合わせたメリハリのある動きは非常にシャープで、特に、手を付かずに行う側転のようなジャンプ連続は、翌日のフレフツォフは全くやらなかったので、ベロゴロフツェフのオリジナルか、特技なのでしょう。また、ジャンプをして膝で着地することを数回繰り返すライモンダへのアピールの場面では、痛めている膝に響きそうなので見ていて怖くなったほどでしたが、全く手加減を許さないと言った踊りでした。

2日連続でライモンダを観たので、どうしても比較してしまうのですが、アブデラクマンを最後まで拒絶する翌日のアントニーチェワとは違い、内心アブデラフマンに魅了されつつも平静を保とうとするアレクサンドロワ。戦いに敗れたアブデラフママンに同情をも見せる表情をしました。

アレクサンドロワは気がきつそうなダンサーに見えますが、バヤデールのガムザッティ役においても、ニキヤに同情する表情を見せたりするのが印象的でしたから(この役で全く毅然としているダンサーもいますものね)、今回の「憐れ」の表情にも彼女らしさが出たのでしょうか。

実際、この日は本気で剣を振っていたならアブデラフマンが圧勝したでしょうが、これはスクリプト通りに話を進めなければならないところ。。。 絶好調のベロゴロフツェフをもう少し見ていたい!と余韻を残した舞台でした。

あの重たい衣装で、かなりの運動量であると思います。

ご本人も出来栄えに満足していたのか、普段カーテンコールで姿を消さんばかりの控えめな彼ですが、この日は目を強く輝かせ、主役カップルと共に前進して歓声を浴びていました。

ところで、初めてボリショイをモスクワ本国で見たので、他の劇場との比較ですが、床の構造に違いがあるのでしょうか? 普段トゥーシュースの音が大きくするアレクサンドロワですが、舞台間近でも全く音が聞こえませんでした。

この日、シュプリーナ、カプツォーワ、アブドゥーリン、ゲラスキン、クリサノワ、ヤッツェンコといった若手の粒ぞろいソリストたちの活躍を見れたのも満足でしたが、ユリアナ・マルハシャンツのような大ベテランのハンガリアン・ダンスで一気に場内を明るく華やかな雰囲気に盛り上げてくれたのも嬉しかったです。やはりオーラがありますね。

衣装、セット、音楽ともに、ボリショイらしい作品であるとおもいました。

モスクワへ着いた当日の舞台。行く前は間に合うかどうかばかり気にしていた数週間でしたが、フライトもスムーズで、道路も混んでおらず、最初からゆっくりと見れました。
 



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ベロゴロフツェフ (叶 )
2007-06-08 13:46:36
この日は私も舞台をみていましたが、ベロゴロフツェフが本当に素晴らしかったです。

登場から死を迎えるまで、神仏が彼の身体を借りて踊っているのでは?と思うほどでした。

彼は昨年4月にイギリス地方公演、そして夏にロンドン公演でも踊りましたが、イギリス地方公演の最後の「スパルタクス」が、やはり入魂の舞台で、こちらのボリショイ・ファンの間では語り草になっています。

彼の「スパルタクス」は非常にカリスマ的なのですが、だからこそ陥れられて孤立してしまう場面が涙を誘い、舞踊技術だけではなく、そんな深い表現もできる円熟したダンサーになったのだな、と感慨深いものがありました。

膝は一度悪くしてしまうと、完治は難しいと思うのですが、長く踊ってほしい、ボリショイ最後のドラマチック・ダンサーです。

返信する
ベロゴロフツェフ (管理人)
2007-06-09 03:59:52
叶さん
そうですか。ベロゴロフツェフがずいぶん好調な舞台だったのですね。見ることが出来ずに残念でした。
返信する

コメントを投稿