慢性腎臓病を合併している2型糖尿病患者に対するフィネレノンの心血管イベントの抑制効果を検討した偽薬対照ランダム化比較試験(FIGARO-DKD)
NEJM 2021; 385: 2252-2263
慢性腎臓病(慢性腎臓病 G2-4A2またはG1-2A3) を合併している2型糖尿病患者7437名が対象で最大量の ACEI/ARB を投与した上で、偽薬またはフィネレノンを追加して中央値 3.2年観察した。主要評価項目は心血管複合イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞、心不全入院)、二次評価項目は複合腎イベント(ベースラインからの eGFR の40%以上の低下、腎死亡) 。
心血管イベントはフィネレノン投与群の 12.4%(458/3686)、偽薬投与群の14.2%(519/3666)で起こった(HR 0.87, 95%CI 0.76-0.98, P = 0.03)。
内訳を見ると、主に心不全入院の頻度がフィネレノン投与群で少なかった(HR 0.71, 95%CI 0.56-0.90)。
腎イベントはフィネレノン投与群の 9.5%(350/3686)、偽薬投与群の10.8%(395/3666)で起こった(HR 0.87, 95%CI 0.76-1.01)。
有害事象の報告はフィネレノン投与群と偽薬投与群の間で差はなかった。高カリウム血症による投薬中止はフィネレノン投与群の方が多かった(1.2% V.S. 0.4%)。
以下、考察
FIDELIO-DKD (主に CKD G3A3 を対象) よりも腎機能の良い慢性腎臓病患者 (60%以上は eGFR 60 以上) を対象にしているが、心不全入院の抑制効果を認めている。有意差こそつかなかったけど、腎イベントの抑制効果も FIDELIO-DKD と矛盾しない結果だった。
EFrHF は除外されているのに、3.2年間で心不全入院を3割減らせるのは悪くない。
SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体阻害薬はそれぞれ 1割弱の患者で使用されていて、両薬剤を使用している患者でも心不全入院は少ない傾向があったので、相加効果がありそうと。今後は SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬と併用した場合の心腎イベントの抑制効果を検討するそう。
フィネレノン 10 mg とスピロノラクトン 25-50 mg を比較するとフィネレノンの方が高カリウム血症が少なかったという報告があるそうだが、フィネレノンの常用量が 20 mg で、スピロノラクトン 25 mg では高カリウム血症は少ないという報告がある。フィネレノン 10 mg とスピロノラクトン 25-50 mg を比較するのはフェアではないだろう。フィネレノンの方が高カリウム血症を来たしにくいというのは眉唾だと思う。同様の効果があるなら、スピロノラクトン 25 mg で良いのではと思ってしまう。
FIDELIO-DKD と FIGARO-CKD の結果を合わせて考えると、糖尿病性腎症3期の患者では腎症進行抑制と心不全の抑制のために最大量の ACEI/ARB を使用した上で、SGLT-2阻害薬(と GLP-1 受容体作動薬) を使用する。なんらかの理由で、SGLT-2阻害薬が使えない場合は高カリウム血症に注意しつつ、SGLT-2 阻害薬の代わりにフィネレノンを使用。今後、SGLT-2阻害薬とフィネレノンの相加効果が示されれば、ACEI/ARB、SGLT-2阻害薬に次いで使用する…という感じになりそう。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110956