子曰く、われは生まれながらにしてこれを知る者にあらず。古を好み、敏にしてもってこれを求むるものなり。(述而)
先生はおっしゃった。わたしは、生まれつき何でも知っていたんじゃないよ。ただ、古いものを慕って、一生懸命に勉強してきただけなのだ。
当たり前のことですが、ただ、自分の好きなことを、こつこつ続けていくと、いろんなことが、深まってきます。知識や経験が積もり、それがさまざまな思いによって醸され、不思議なものに変わってくる。ただそれだけで、自分が、なんだか思いもしないものになってくる。世界も変わってくる。
わたしは、詩や絵が好きだっただけで、とにかくそれを続けてきました。絵は、本当は油絵や水彩などを詳しく習いたかったのですが、子供が次々に生まれて、その暇はなかったので、短時間で制作できる切り絵にしぼって、楽しくやってきました。女性の顔だけの絵しか、ほとんど描けないのですが、それでなかなかいいものになってきたと、自分で感じています。これでいいんじゃないかなって。
わたしの絵の中の女性は、なんだか、生きてるような気がして、わたしの作品であって、わたしじゃないような気がして、最近では、わたしのサインを入れるのも、遠慮するようになってきました。また、魂を感じてしまうから、全身像にすると、肉体を感じてしまって、苦しくなる。てことで、女性の顔だけで、まあいいかなって。
これが、何十年続けてきて、それが深まってきたってことなんでしょう。
何でも、本当に自分の好きなことだったら、やってるうちに、いいものになってくるのです。みんな、そういうものじゃないかなあ。
わたしの住んでる家は、なんてことはない平凡な小さな家に見えますが、プロがみたら、なかなかの家らしいです。柱など、とてもいい木を使っているらしいです。ちょっとしたドアの細工など、すごくいい仕事をしているらしいです。雨漏りなんかもしたことありませんし、一度地震で、少し押し入れの柱と横木の間にずれができましたが、いつの間にかそれも自然に治っていました。
建てた大工さんは、大工がすきでずっとやっている人です。百年先の人に見てもらいたいって、仕事を大切に、大切に、やっている人だそうですよ。
好きなことを、一生懸命、まじめにやる。それだけで、とってもいいものが作れる。それが幸せってものじゃないかなって、思う。
わたしもこれから、たくさんの絵を描き、詩を書いていくと思う。それがすきで、一生それをやっていきたいから。それでどんなものが作れるのか、どんな風に変わっていくのか、それが楽しみ。ずうっと好きなことをやれる。とても幸せ。
あいしてるってことが、いいんだな。