とろいわたしのファイルの中で、数少ないアゲハの写真です。幼稚園の庭のランタナの茂みによってきてくれたのを、幸運にとることができました。と言っても、ようやく写せた間抜けな写真をトリミングして、なんとか見れるかなって感じにしたものなんですけど。
アゲハはすばやくて、動きがせかせかしてて、とてもわたしの腕とカメラでは、太刀打ちできません。幸運の女神と、アゲハの憐れみにすがるしかないというところです。
ここらへんには今、モンキアゲハをよく見かけるのですが、空の高いところをいつも飛んでいて、カメラに手を触れるまもなくいってしまう。アゲハは冷たいな。アオスジアゲハだけですね。時々わたしの顔を見に来てくれるのは。
2枚目もピンボケです。模様の美しさがわかるかなって思ってのせてみましたが、あまりいいものではないなあ。かわいいピンクのランタナの花を、せかせか飛んで蜜を集めている。ほかのことなんかにはなにも興味がないという顔をして。楽しそうだな。きれいだな。何で君はそんなに、かわいいの。
人間はね、時々、生きてるのがくるしくなるよ。君みたいなきれいなチョウチョがきてくれると、うれしいのに、苦しくなるんだ。胸がきゅうっと痛くなって、涙が出そうになって、目を背けたくなる。うれしいなって思うのに、何で切なくなるんだろう。君があんまりにきれいなのが、苦しいんだ。
するとアゲハはひらひら花の上を飛びながら、わたしに不思議なことばを投げてくれる。胸の中の一番いたいところに、それは光のため息のように、温かい熱を、一瞬ふきつける。
「愛が苦しいのは、返すことなんかとてもできないって、思っているからよ。」
うん。そうだね。わたしは、苦しい。みんなに愛されているのが、苦しい。それはわたしが、とてもじぶんをみじめだと思っているからなんだ。
「もうやめなさいよ。かみさまはわたしがすき。わたしもわたしがすき。それでいいのよ」
アゲハはそっけない。ランタナと遊び終わったら、また新しい花を求めていってしまう。たのしいことがいっぱいあるのよ。それをさがしにいくの。ああうれしい。愛は苦しくないんだよ。だってかみさまは、いつもわたしにいうんだもの。
いいんだよ。おまえが、おまえで、いるだけで。