世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

オリヴィエ・幻の小鳥王

2012-04-24 12:00:12 | 薔薇のオルゴール

金の巻き毛の、オリヴィエ・ダンジェリクです。
「月の世の物語」のように、今回もたくさんの登場人物の絵を描こうと思ったのですけれど、なぜかこの「誰も知らない王様」シリーズでは、わたしには、オリヴィエ以外の人物が難しくて、描けませんでした。
だから、ノエル・ミカールや、ウジェーヌ・ポル、ソランジュ・カロクなどの絵は、よかったら、皆さんで想像して、いろいろと描いてみてください。

オリヴィエ・ダンジェリク、幻の小鳥王。

本当は、ウジェーヌの次には、オリヴィエが王様になる予定でした。オリヴィエが、王様になれば、国に、本当に良いことが起きるはずでした。オリヴィエは、本当にやさしい人でしたから、それはきれいな笛の音を、国に流してくれたでしょう。それを聞いた人々は、それはやさしい気持ちになって、たくさんいいことをして、たくさんのいいことが、国に起こったはずなのです。

けれども、オリヴィエは、変な詩を書く以外何にもできない、馬鹿な奴だと、みんなに思われていて、ほとんど誰にも、相手にされなかった。病気になっても、誰も気づかなかった。だから、オリヴィエは、本当に、あっけなく、いってしまった。

ウジェーヌは、本当につらかった。でも、オリヴィエの分まで長生きしてくれて、ずっとバイオリンを弾き続けてくれた。そして、やっと見つけた、ソランジュ・カロク。ウジェーヌは、ソランジュに手紙を書いた。でも、手紙を封書に入れたとたん、心臓がゆらゆらと揺れて、倒れてしまった。

その後のことはきっと、金の鍵が起こした奇跡。死の床の夢の中で、ウジェーヌはソランジュに出会った。鍵は、確かに、ソランジュの手に渡った。国の時計は止まりかけたけど、ぎりぎりのところで、助かったのです。

今も、ソランジュはピアノを弾いている。けれど、誰も、きっと永遠に知ることはない。オリヴィエを失って、国が何を失ったのかを。けれども、オリヴィエは言ってくれる。

ああ 燃やしてしまったんだね
でも いいんだよ
もう一度 薔薇は咲いてくれるから

もしや、ソランジュが、次の王様を見つけられないまま、死んでしまったとしたら…。
あるカフェの壁に飾ってある小さな絵の中から、夜な夜な、不思議な笛の音が、響き始めるかもしれない。


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あとがき

2012-04-24 06:27:57 | 薔薇のオルゴール

わたしの拙い小さなファンタジーにここまで付き合って下さった皆さん、ありがとうございます。
ウジェーヌ・ポル、誰も知らない王様のお話は、一応、これでおしまいです。これまで七日間に紹介した七つのお話をまとめて、「薔薇のオルゴール」と、ここで改めて名付けたいと思います。地下室の扉を開けると、そこから不思議な音楽が聞こえる。それは不思議な、薔薇のオルゴールのようだ。そんな感じで。

この、ポル氏が住んでいた国は、どこにあるんでしょうね。どこか、フランス風な雰囲気がありますが、ちょっと違う気がします。一応説明しておきますけど、ペール・ノエルというのは、フランス語で、サンタクロースのことです。
まあ、誰も知らない王様のいる国ですから、誰も知らない国なんでしょう。

誰も知らない国の、誰も知らない王様にも、亡くなったあと、おくり名が贈られます。

ノエル・ミカール、木漏れ日の微笑み王。
ウジェーヌ・ポル、春風のささやき王。

誰も知らないけれど、金の鍵だけは覚えている。すべての王様の名前を。

これまでにも、きっとたくさんの誰も知らない王様たちが、金の鍵の導く地下室で、ずっと楽器を弾いてきて、国の時計を回してきたんでしょう。

なお、このお話は最初、それぞれを一日に上下二回に分けて紹介していこうと思っていましたが、煩瑣になると思い、一日に一回の更新で、いっぺんに紹介することにしました。戸惑った方もいらっしゃるかもしれません。おわびします。今日からはまた、しばらく、一日二回の更新になります。

カテゴリ「薔薇のオルゴール」には、これからも、私の書くメルヘンやファンタジー、それに関する絵や、また他の名作童話に関するエッセイその他、いろいろな試みを、盛り込んでいきたいと思います。これからもよろしく、お付き合いくださいませ。


*


補足。2013年1月24日、総合タイトルを「薔薇のオルゴール」から「ガラスのバイオリン」に変更いたしました。





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