金の巻き毛の、オリヴィエ・ダンジェリクです。
「月の世の物語」のように、今回もたくさんの登場人物の絵を描こうと思ったのですけれど、なぜかこの「誰も知らない王様」シリーズでは、わたしには、オリヴィエ以外の人物が難しくて、描けませんでした。
だから、ノエル・ミカールや、ウジェーヌ・ポル、ソランジュ・カロクなどの絵は、よかったら、皆さんで想像して、いろいろと描いてみてください。
オリヴィエ・ダンジェリク、幻の小鳥王。
本当は、ウジェーヌの次には、オリヴィエが王様になる予定でした。オリヴィエが、王様になれば、国に、本当に良いことが起きるはずでした。オリヴィエは、本当にやさしい人でしたから、それはきれいな笛の音を、国に流してくれたでしょう。それを聞いた人々は、それはやさしい気持ちになって、たくさんいいことをして、たくさんのいいことが、国に起こったはずなのです。
けれども、オリヴィエは、変な詩を書く以外何にもできない、馬鹿な奴だと、みんなに思われていて、ほとんど誰にも、相手にされなかった。病気になっても、誰も気づかなかった。だから、オリヴィエは、本当に、あっけなく、いってしまった。
ウジェーヌは、本当につらかった。でも、オリヴィエの分まで長生きしてくれて、ずっとバイオリンを弾き続けてくれた。そして、やっと見つけた、ソランジュ・カロク。ウジェーヌは、ソランジュに手紙を書いた。でも、手紙を封書に入れたとたん、心臓がゆらゆらと揺れて、倒れてしまった。
その後のことはきっと、金の鍵が起こした奇跡。死の床の夢の中で、ウジェーヌはソランジュに出会った。鍵は、確かに、ソランジュの手に渡った。国の時計は止まりかけたけど、ぎりぎりのところで、助かったのです。
今も、ソランジュはピアノを弾いている。けれど、誰も、きっと永遠に知ることはない。オリヴィエを失って、国が何を失ったのかを。けれども、オリヴィエは言ってくれる。
ああ 燃やしてしまったんだね
でも いいんだよ
もう一度 薔薇は咲いてくれるから
もしや、ソランジュが、次の王様を見つけられないまま、死んでしまったとしたら…。
あるカフェの壁に飾ってある小さな絵の中から、夜な夜な、不思議な笛の音が、響き始めるかもしれない。