みよちゃんがお嫁にゆくとき
おとうさんは みよちゃんに言ったそうだ
おまえの のちのちのためのことを考えて
あそこに嫁にやるから
わかってくれよ
みよちゃんは お嫁にいったさきで
下働きのように働かされた
お姑さんは意地悪で 口も悪くて
自分は何にもしないで遊んでばかりで
家のことはなんでもみよちゃんにやらせて
しまいにはおむつの交換までやらせて
死んでしまった
一緒になった旦那さんは
いつもいばってて
みよちゃんに文句ばっかり言ってた
醤油の位置が悪いだとか
みそしるがぬるいだとか
みよちゃんがどんなにきちんとやっても
旦那さんはつまらないことでいつも
みよちゃんを馬鹿にして叱るのだ
みよちゃんは お姑さんと旦那さんに
好きなだけこき使われて
たくさんの苦労をしていた
一度だけだけど 親を怨むようなことも言った
なんでこんなとこに嫁に来させたのかと
そして今 みよちゃんは病院で
酸素のパイプを鼻につけながら
眠っている
苦労ばかりの人生だったね
辛かったろう 苦しかったろう
楽しいことなんて いくらもなかったろう
でも お父さんは本当に
みよちゃんのためを思って
お嫁にやったんだよ
人間はねえ 苦労をしないといけないのだ
苦労が足りないと 馬鹿になってしまうのだ
だから みよちゃんのお父さんは
みよちゃんに苦労させるために
嫁にやったのだ
そうすることが
ほんとうにみよちゃんのためになるからだ
幸せじゃなかったって思っているかもしれない
だけど人間は幸せになるために生きるのではないのだ
苦労続きだったね つらいことばかりあったね
愛しているよ みよちゃん
生きるってことは そういうことなんだよ
幸せはいつもみよちゃんのそばで花のように咲いていた
ほんとうに がんばったね