雪降る 白きも静かなる道を
こころなき 白貝のごとき雪の
冷たく ほろほろと落ちる道を
ぬれそぼち 歩きゆく
紅梅のごとき われの耳を
穏やかな刃のごとき冷風の切る
雪は鉛の粒のごとく重く
凍てつくこほりにとぢこめし
にくきあざけりの
しじまの舌のごとく
われのほほを打ちにければ
われのほほを流れる涙は
湯のごとく熱く したたり落ち
白き雪の上に
うさぎの足跡のごとき
ちさき穴をこしらへゆきたり
まだ ゆくか この道を
風の中に姿なくも我に問ふものはたれか
問ひてきくもせん無きことと
知りながらも問ふ
おまへはたれか こたへはすまい
かろきつみも おもきやみも
すべてを ましろなるこほりの雪にて
かくしつくさむとした者の
いつはりをかなしむは
おろかともおもひつつもわれはいふ
まだ ゆく この道を
ましろにも こころなき
白き蛾の雪の降る こほるしじまの道を
われはゆく
まっすぐに