世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

バウルソング

2015-10-27 03:59:03 | ちこりの花束


 先日、インドの吟遊詩人(バウル)のグループがこの町に来るというので、その歌を聴きに行ってきました。バウルソングと言うそうなんですが、結構面白い経験でした。心身を揺さぶる歌と踊りのリズムの中で、忘我的な陶酔感に魂を放りこまれ、神との愛の交感に酔いしれるという感じでした。
 その夜、私は不思議な夢を見ました。亡命者が私の家に助けを求めて来られ、軒を貸すつもりで家に入れると、その人は故郷からたくさん家族を呼んできて、私の家をのっとられそうになるという夢でした。一度目を覚まし、あ、これは今日聴いた異国の歌の影響だなと考えました。バウルたちの神々は、私を陶酔の輪に入れたいのだな。でも、私は入りたくないなあ、と思い、もう一度眠りにつきました。すると今度は、こういう夢を見たのです。
 吟遊詩人のグループの人に、私がこう尋ねるのです。
「あなたがたの愛する神の名は、何とおっしゃるのですか?」すると。有無を言わさず追い出されてしまい、答えてもらえなかったのです。
 目を覚まし、少しホッとしていました。私はバウルにはなりたくありませんでしたから。
 多分、私の背後の見えない霊的な世界では、一夜のうちに何かの葛藤があったでしょう。というのも、あれから私は、バウルたちの歌が一向に思い出せないのです。あんなにすごいリズムと歌だったのに。何かの霊的なエネルギーが歌を通して私の心に入りこんできましたが、私はどうやらそれを排除してしまったようです。
 芸術というのは、目に見えない魂の世界を、動かすものなのだな、そんなことを知った経験でした。


(2004年11月ちこり32号、コラム)



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする