栗を噛むのに飽きてきたころ、オラブは何だか肉を噛みたくなった。体が何かを欲しているような気がした。面倒くさかったが、しかしほかに何をすることもなかったので、彼は立ち上がった。そして山のふもとの方にある木の間をめぐり始めた。
チエねずみが冬眠していそうな木を探していたのだ。
しばらくして、根元が半分腐ったニガの木か何かの木を見つけた。オラブは鼻をきかせ、その樹皮をかいだ。そしてここらへんかと思うところの木の皮をはいでみた。
いた。
オラブはにたりと笑った。林檎のようにまるまった、灰色のチエねずみが冬眠していた。オラブはやすやすとそのネズミをつかまえ、それを片手でにぎりながら、ねぐらに帰った。
ねぐらの鹿皮の上に座ると、オラブは石包丁を取り出し、そのネズミを早速切り裂いた。そしてその血と肉をしばし存分に味わった。もしかその様子を、村人が見ていたら、まるでけだもののようだと思うことだろう。オラブは顔じゅうをネズミの血で汚しながら、ネズミを骨になるまで貪り食った。
食えないしっぽをちぎり捨てると、オラブは少し嫌になってきて、食っていたネズミをおいた。ネズミ一匹では腹がいっぱいになどなれないが、それでも自分の体の中にぬくいものが流れてくるような気がした。ざわざわと寂しさが起こってくる。肉を食ったときにはいつもこの感情が来る。涙が出そうになる。つらい、つらい。
アシメックの言葉がよみがえった。かえってこい、と彼は言った。帰りたくなった。
だが、オラブはまた、へっ、と息を吐き、自分でその感情をつぶした。今さらどの面を下げて村に帰ろうというのか。