世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

青い鹿③

2017-12-19 04:13:27 | 風紋


涙を流しながら自分を見ている、ソミナの顔が見えた。

「あにや、あにや、目を覚ましたかい?」

ソミナが嬉しそうな声で言った。アシメックはぼんやりした意識の中で、自分がいつの間にか自分の家にいることを確かめた。

「ああ、ソミナ、どうしたんだ? おれは」

「サリクとシュコックが抱えて、ここまで運んでくれたんだよ。ああ動かないで、肩にけがをしているんだ」

見ると、アシメックの右肩は、きれいな茅布で包まれていた。ソミナが手当てしてくれたのだろう。アシメックは、少し血の染みの浮き出た茅布に触れた。痛みが走った。彼は床に身を預け、しばしまた目を閉じた。

「あの鹿はどうしたんだろう?」

「キルアンのこと? まだ解体されないで、広場においてあるよ。シュコックは、どうするかアシメックにきめてもらうって」

「死んだのか」

「うん、みんなで殺したって」

ソミナは涙をふきながら言った。アシメックが目を覚ましたのが本当にうれしいのだ。真っ青な顔をして運ばれてきた時には、兄が死んでしまったのだと思った。だが強い男というのはなかなか死なない。鹿に頭突きされたくらいでは、絶対に死なない。ソミナは硬くそう信じて、アシメックの手当てをした。




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