涙を流しながら自分を見ている、ソミナの顔が見えた。
「あにや、あにや、目を覚ましたかい?」
ソミナが嬉しそうな声で言った。アシメックはぼんやりした意識の中で、自分がいつの間にか自分の家にいることを確かめた。
「ああ、ソミナ、どうしたんだ? おれは」
「サリクとシュコックが抱えて、ここまで運んでくれたんだよ。ああ動かないで、肩にけがをしているんだ」
見ると、アシメックの右肩は、きれいな茅布で包まれていた。ソミナが手当てしてくれたのだろう。アシメックは、少し血の染みの浮き出た茅布に触れた。痛みが走った。彼は床に身を預け、しばしまた目を閉じた。
「あの鹿はどうしたんだろう?」
「キルアンのこと? まだ解体されないで、広場においてあるよ。シュコックは、どうするかアシメックにきめてもらうって」
「死んだのか」
「うん、みんなで殺したって」
ソミナは涙をふきながら言った。アシメックが目を覚ましたのが本当にうれしいのだ。真っ青な顔をして運ばれてきた時には、兄が死んでしまったのだと思った。だが強い男というのはなかなか死なない。鹿に頭突きされたくらいでは、絶対に死なない。ソミナは硬くそう信じて、アシメックの手当てをした。