オラブのようなものにしたくはない。だからセムドもいろいろ考えたあげく、狩人組に入れてくれと頼んでみたのだが。
役男は常にみんなのことを心配しているものだ。セムドの気持ちはアシメックにも痛いほどわかった。
会話が途切れてしばらくして、シュコックが口を挟んだ。
「キルアンは広場においてある。どうする、アシメック」
「ああ」
アシメックは、その時になって、眠っていた時にみた夢を思い出した。変な夢だったが。アシメックはちょうどそこにミコルがいたこともあり、その夢をみなに話してみた。ただ、ケバルライと誰かに呼びかけられたことだけは言わなかった。
「それはキルアンの霊だな」
とミコルが言った。
「そう思うか」
とアシメックが答えた。
「キルアンは角を神にまつれと言ったのか」
「ああ、そうすれば祝ってくれると。祝うとはどういうことだ? ミコル」
「みとめてやるということだ。アシメック、おまえ、鹿にみとめられたんだろう」
「みとめる?」
みながざわついた。鹿は神がカシワナ族にくれた宝であり、神の使いでもあった。それに認められるということは、実にいいことなのだ。
「吉兆だな。きっとキルアンを食えば村にいいことがおこるだろう」ミコルは言った。
「吉兆か。たしかにいい鹿をとったらみんなにいいことがあるとは言われている」
「キルアンみたいな鹿は今まで見たこともないからな。それはすごい霊なんだろう」
「アシメックはあれをやったのか」
アシメックの夢の話は、瞬く間に村に広がった。アシメックがけがをしたということは、村に衝撃を与えていただけに、村人はその話に飛びつくように乗った。