恋の儀式というのにも手練れがいる。年かさの男が、若いものに微妙な技を教える。
「いい女はすぐに答えないんだ。じらすんじゃないんだがね、迷うのさ。すぐに乗って来ないんだ。そういう女が欲しいときは、歌を三度歌え。こっちが強くいかなきゃ、あっちからは来ないぞ」
「イディヤがそうだ。去年はあれで三人くらい断ったよな。結局だれとも寝なかった」
「下手だからそうなるんだ。イディヤみたいないい女だったら、三度鳴け、それくらい押すんだよ」
歌垣は神の下に行われる恋だ。だからみな堂々としていた。いい女と寝るために、男はいろいろなことを考えた。目論見が飛び交った。若いやつらは自分の目的の女を得るために、いろいろと探り会った。年かさで経験の濃いやつは、互いにバランスをとりつつ、自分の女を決めた。
歌垣には、女は10歳、男は11歳から参加していいことになっていた。この時代は、みなそれくらいで十分に成熟したのだ。
11歳のネオは、今年が初めての歌垣だった。大人の男に紛れて、一生懸命に歌を練習していた。まだ子供だが、もう意中の女はいた。恋をしているんじゃない。ただ、女がいいという感じなのだ。もちろん女との交渉などしたことはない。