歌垣が終わると、だんだんと日差しが強くなりはじめる。祭の興奮はすぐに冷め、みなはいつもの暮らしに戻っていった。
サリクはオロソ沼に蛙の罠をしかけ、それを毎日見に行った。オロソ沼には太った蛙がうようよといるのだ。いぼのある灰色のやつのがうまい。罠を覗いてうまくかかっていると、サリクは歓声をあげる。ケルマのことはもうすっかり忘れていた。
家に持ち帰って早速皮をはぎ、肉は香草と一緒にゆでて食う。皮はしばらく干し、粉にして薬にする。自分でも使うが、ほかのやつと交渉して何かと交換することもあった。
骨も置いておく。細かく切っておいておけば、空蝉の鈴の種にできるからだ。
蝉が鳴き始めるころになると、蝉の抜け殻があちこちで見つかるようになる。それを集めるのは子供の仕事だった。空蝉という。空蝉は、まじないによく使われた。中が空っぽなので、蛙の骨で作った実を入れて鈴にするのだ。それをヒモの先につけて振るのが、子供の遊びの一つだった。
空蝉の鈴を振ると、子供の魂をさらおうとする魔が嫌がって逃げていくと言われていた。