世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

立ち止まる

2019-02-14 04:24:20 | 気層化石


散歩の途中で、わたしはよく立ち止まって空を見る。

昔の記憶がよみがえってくるからだ。

記憶と言っても、みなで共有しているこの存在の記憶なんだけどね。

若いころの小さな失敗だとか、幼いころ味わった貧しさや寂しさだとか、思い浮かんでくると、わたしは通り過ぎていくことができずに、ついかみしめてしまうのだ。

ここらへんが、ゾスマやエラキスと違うところだ。

彼らは過ぎ去った小さなことになどかまわない。どんどん前に進んでいく。

だけどわたしにはそれができない。苦い記憶が浮かび上がってくるたびに立ち止まって、ゆっくりと思い返してしまう。

過ぎ去ったことになどもう何の解決策もないのに、しばらく立ち止まってしまう。

若いころというのは悲しい。過ちから逃げられない。もちろん、過たねばわからないから人は過つのだが、それがどうもかなしいくらいいとおしくて、わたしは立ち止まってしまうのだ。そしてしばらく、自分の小さな傷を愛撫する。

しばらくすると、まあいいかという気持ちにもなって歩き出すのだが。

こういう自分の癖というか、馬鹿なところというのが、わたしはいいと思うんだ。





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