馬鹿は
人真似だけは異様にうまい
他人の真似ばかりしている
人間というものを分析し
分類し
どこをつけば
馬鹿になるかの
実例のデータを
たんまりと持っている
だがそれは所詮
現象を分析しているだけに過ぎない
どのように知恵を巡らし
先回りをしたつもりで
あらゆる巧妙な手口を使い
人間をたばかろうとしても
決してだませない真実の壁がある
馬鹿はそれを知らない
人間の忘れ去った
墓地の中に
神が埋めた
人間の限りない可能性があることを
馬鹿は知らない
欲の泥の中に付け込めば
いつでも食べられる肉になると
思っている
それでなければ
自分が人間を支配できないからだ
うっとうしい人間をすべて
肉の塊にし
それを土壌にして
馬鹿は自分の栄光の大樹を育てようとした
だがそれは
たったひとりの
真実に生きる美しい女によって崩れ去った
誰も知らなかった
女がそれほど美しいものだったとは
馬鹿は何も知らなかった
人間存在が
それほど美しいものだったとは
愛していると言えばよかったのに
馬鹿だと言ったから
みんなが行ってしまった
それがさびしかったからだけなのだと
言えなかった自分だけが
馬鹿の元に残った