ルイ・トッケ、18世紀フランス、ロココ。
フランスはフランス革命を起こし、民主主義の時代への道を最初に開いた国だ。ここでもう一度出てきてもらおう。
マリー・レクザンスカはルイ15世の妃である。ルイ16世にとっては祖母にあたる。凡庸な顔をしているが着ているものは虚栄の極みというものである。人間というよりは、服が生きているというもののように見える。
ルイ15世は政治にはあまり関心を示さず、外国に余計な手出しをして戦争を起こし、財政をひっ迫させてフランスを衰退に導いた王である。もちろん本物ではない。私生活ではポンパドゥール夫人やデュ・バリー夫人などの愛人を多くこしらえ、奔放に愛欲に浸った。そういう男の妻にしては、この女性はのんきな顔をしている。マリー・レクザンスカは世継ぎを生むことだけを期待されて王妃になった女性だった。健康な体でそれなりの血筋であればよかったのだ。要するに頭はそうよくなかったのであろう。
ルイ15世の治世は様々な人間の恩讐を積み重ね、時代の照準をフランス革命に絞り続けていた。その時代の影で、こういう女性のために大枚の金がつぎ込まれていたのだ。
彼女が着ているこのすばらしい服は、人間の血で作ったものだ。王権の腐食はすでにこのときに極まっていたのである。