車と家が
人々から去ってゆく
広い庭から
庭木が裸足になって逃げだす
こんなものは馬鹿みたいだと
放っておいたものが
いつの間にか消えている
必要だと思ったときに
それはない
ブランド物のバッグが
溶けて消えてゆく
かっこいいブーツが
足から逃げて行く
アニメ塗りのような
ファンデーションが
とれない
自分の本当の顔が
馬鹿になる
空が落ちてくる
海が反乱する
風が棒のように硬くなる
花は凍る 森は拒否する
水は飲もうとすると
馬鹿かという
何もかもは だれかが許してくれていたから
あったものだったのに
それは当然 自分のものだと思っていた
そういうものが
一斉に
人間から去って行く
背景の反乱だ
ネガとポジの反転だ
人間よ
おまえたちはもう
主役ではない
舞台の隅に退き
カーテンのほころびでも
つくろっているがいい