ある日の事、長男と次男が、海岸で黒い鳥を拾ってきました。それはほとんど真っ黒な大きな鳥で、どうやら軍鶏のようでした。多分闘鶏用のものでしょうが、両足がマヒして動かなくなっていました。闘鶏用としてはもう使えないので、元の飼い主に捨てられてしまったのでしょう。
どうしようかと思いましたが、子供の気持ちもくんでやらなければと、世話を始めました。それにその鳥は、足こそ動きませんでしたが、全身ほとんど真っ黒な羽と、鋭く澄んだ金茶色の瞳がとても美しくて、世話をしてあげたいなという私の気持ちも働いたのです。エサや水をあげると、飢えていたのか勢いよく食べました。糞で汚れていたおしりを洗ってやったり、マヒしていた足をさすってやったりすると、きれいな瞳を気持ちよさそうに細めました。それだけでも、何となく幸せな気持ちになったものでした。
けれど、世話をして七日あまりで、鳥は死んでしまいました。朝、硬くなって死んでいる鳥を見た時は、少し予期はしていたものの、涙が流れました。
「人間を恨まないで死んでくれたと思うから、それでいいよね」
子供とそう語り合いました。
(2002年7月ちこり25号、編集後記より)