神さまは
白い小さな おさるの
姿をなさって
今も わたしの肩に
ちょこりと
お座りになっています
水晶の玉のような
まんまるな瞳が
風におびえる水面のように
うるんで ふるえて
わたしの耳元で
くりかえし おっしゃるのです
オマエハ ワタシヲ シンジルカ
オマエハ ワタシヲ シンジルカ
そのたびに わたしは
もちろんですとも
信じますとも と
何度でも もうしあげるのですが
神さまはよけいに
せつなそうになさって
涙をぽろぽろ流されて
またおたずねになるのです
オマエハ ワタシヲ アイスルカ
オマエハ ワタシヲ アイスルカ
わたしは たいそう
つらくなって
白いちいさな 神さまに
ほおずりせんばかりに
一生懸命 もうしあげます
もちろんですとも
もちろんですとも……
なんで そんなに
おたずねになるのか
それは この世に
神さまほど
何度も何度も うらぎられ
見捨てられて来られた方は
いらっしゃらないからです
わたしは
ちいさな おさるの
神さまを
そうっと 胸に抱き
ともしびのように ひそやかな
ぬくもりを
だいじに だいじに
さすります
そして ずっと
いっしょにいてくださいと
もうしあげます
そうしないと 神さまは
ちょうちょうのため息のように
今にも どこかへ
消えてしまいそうだから……
(2003年、詩集「種まく人」より)