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とれた魚は、漁で働いた男たちに平等に分けられた。アシメックも三匹もらった。アシメックは遠慮したが、どうしてももらってくれというので、アシメックは断ることもできず、もらうことにしたのだ。三匹の大きな銀の魚を見つつ、アシメックはその一匹は妹のソミナにやろうと思った。そしてもう一匹はミコルに、あともう一匹を、少し考えてから、宝蔵を守っているエルヅにやろうと考えた。
そう思うと、アシメックはすぐにでもエルヅに会いたくなった。そこで、漁をしていた男たちに礼をいうと、村に帰っていった。
宝蔵(たからぐら)というのは、族長の天幕の裏にある天幕のことだ。そこには村の共有財産が収められている。大事なものだから、常に見張り番がいて、管理をしていた。その管理をしている男が、エルヅという男なのだ。
エルヅは変わった男だった。体が小さく、鹿狩りなどの厳しい労働には向いていなかったが、数というものに強く執着していた。数を数えるのが好きなのだ。
カシワナ族にも計算というものはできる。だが、どんなに頭のいいものでも、百以上の数を数えることができなかった。カシワナ族の言葉では、百のことはティンダという。そしてそれ以上の数は、ティンダレア(百以上)と言って、もう考えることができなかった。しかしエルヅはその先のことを考えていた。そして十進法を発展させて、三千まで数えることができたのだ。