世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

本当の自分

2015-12-21 03:33:09 | ちこりの花束

 自信たっぷりになるってことは、ある意味、自分を見失うってことかもしれないですね。悩み苦しむことを棚にあげて、現段階の自分を保存してゆくために、自分を忘れていく。感じることや考えることを怠っていくと、人はどこか冷めた傲慢に陥ります。怠惰の中の永遠で、「大人」になったのだと錯覚してゆく。
 それができない人はただ悩み苦しみます。そして表現の道に光を見いだしてゆかざるを得ない。
 自分の中にある感性と、何かを表現したいというどうしようもない何かとに、導かれながら、自分を追い求めてゆくというのもいいことです。やれるとこまでやってみる。それしかないと、本当の自分が、自分の中でささやき続けている。


(2006年4月ちこり36号、通信欄)





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灯火

2015-12-20 03:26:35 | 詩集・試練の天使

あなたの記憶と
わたしの記憶が
砂のようにまじりあってくる

わたしたちは
まるで結合双生児のように
どこか深いところでつながっているようだ

あなたの見ている夢の中で
飛んでいる白い蝶々が
わたしのところにも
飛んで来る

あなたの見ている夢の中で
泳いでいる碧い魚が
わたしのところにも
泳いでくる

野原の花々は
咲くたびに微かな痛みを感じて
小さな声を上げる
それに耳を澄ましている
あなたの心が
わたしのところにも
流れて来る

痛かっただろう 本当は
もっと自分で生きていたかったろう
それを無理やりやめさせたのは
もうあなたが限界を超えすぎ
疲れ果てていたからだ

自分のやったことに言い訳はしない
後悔もしない
だがその結果起こったことは
あまりにも苦しかった

あなたの声が聞こえない世界は
太陽が半分になってしまったようだ
二度とは聞けないあなたの美しい言葉を
まるで母を恋う子供のように
心のどこかで恋うているわたしがいる

あの美しい人は
あなた以外には誰もいなかった
あの暖かい人は
あなた以外には誰もいなかった

夢の中で心を溶かしあいながら
少しずつ一つになって行く
あなたとわたしの間で
愛が灯火のように揺れている

愛している




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2015-12-19 03:31:03 | 画集・ウェヌスたちよ

2004年ごろ、切り絵。
同人誌表紙用に制作したが、ボツにしたもの。





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天使の親子

2015-12-18 03:20:56 | 画集・ウェヌスたちよ

2005年ごろ、切り絵。
同人誌の挿絵として制作したもの。






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修羅の地獄

2015-12-17 03:31:53 | ちこりの花束

 修羅の地獄を見たことがあります。もちろん夢でですが。
 それは、些細なきっかけで夫婦ゲンカをしてしまった夜のことでした。石だらけの荒れた道を挟んで、人々がわめきながら何かを投げあっています。恐ろしい毒のような言葉を吐きながら、憎悪の限りをこめて。何を投げ合っていたと思いますか? 石じゃない。刃物だとか、そんなものじゃない。……はらわただったんです。鬼のような形相をしたたくさんの人間たちが、自分の腹をちぎって投げあってたんです。しかもそれには終わりがない。こちらが投げればあちらも投げる。おまえが悪い。いいや、あんたが悪い。人々の恐ろしい顔、顔……永遠に終わらぬ地獄。
 あまりの恐ろしさに、無理やり夢からもどってきてしまいました。こんな裏ワザ使ったことありませんか? 目を覚ました時、ちょっとズルをしちゃったような後ろめたさが残るみたいな……。でもほんとに怖かったんです。
 夫婦ゲンカを中止したのは、言うまでもありません。


(1998年7月ちこり13号、ミニエッセイ)





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つばさくん

2015-12-16 03:25:20 | デッサン・下描き

キャラクターデザインの公募用に描いたもの。結局応募はしなかった。
名前はわたしが勝手につけた。





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苺の秘密

2015-12-15 03:41:50 | 詩集・試練の天使

あげるよ あげるよって
言っていることにしなければ
いつも苺を食べている
自分が悲しくなってしまうから
いつも苺は
あげるよ あげるよって
言ってることにするんだね

たしかに 苺は
食べていいよって
言ってるけどね
でもね
いつまでもそれに甘えてちゃいけない

ありがとうって
ほんとうにありがとうって
苺に心から言わなければならない
だって苺がいなければ
どんなに生きることが寒くなるだろう

あげるよ ぜんぶあげるよって
苺は言ってるけどね
馬鹿だから当然だと思って
勝手にとっちゃいけないんだよ
やさしくしないとね
礼儀をしないとね
苺は馬鹿じゃないんだ
とってもかわいくて
かしこい生き物なんだよ




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栴檀

2015-12-14 04:14:05 | 詩集・試練の天使

風に吹かれ落ちていく
金色の栴檀の実よ
われはおまえたちすべてを愛す
ゆえに地に落とす

絶望に引き裂かれた声をあげ
いつまでも泣いているのではない
己の中にひとつ星のごとき
核ありと気付いたものは
たちあがりゆく道を目指せ
何をすればよいか
どこにゆけばよいか
すべてはおまえが知っている

千万の栴檀の実の
全てが芽生えることはできぬ
芽生えても伸びることはできぬ
しかし絶望を越えて
熱いおのれを叫ぶ者には
己自身の中から行く道が伸びるだろう
それこそが創造というものである

風に吹かれ落ちていく
金色の栴檀の実よ
われはおまえたちすべてを愛す
ゆえに地に落とす

愚か者の暗夜をくぐりぬけ
月満ちた胎児のごとく
光に向かいのぼれ
そうすればあらゆる美が
すでにおまえの中にあったことに
おまえは気づくだろう

絶望を目指し絶望を破れ
栴檀の実よ
あらゆる艱難をくぐり抜けてゆくために
今こそ生まれ出でよ





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ホミエル

2015-12-13 03:26:24 | デッサン・下描き

切り絵の下描き。完成作はこちら





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浮気

2015-12-12 03:23:33 | ちこりの花束

 結婚して、子供を授かり、妻が育児に奮闘している頃は、夫は大体20代後半から30代の仕事が楽しくて仕方ない頃です。家庭を振り向く暇のない人も多く、そして彼のいる仕事場には、おしゃれもお化粧も十分にできる若い女性がたくさんいます。妻は育児で疲弊しているし、外に誘惑はあるしで、夫婦の危機が訪れるのも、この頃が多いのです。
 でも、一時の感情で、何もかもを放り投げてはいけないと思うのです。種野は、妻を裏切って浮気相手の女性と結婚し、それから全てがうまくいかなくなった男性を知っています。元の妻子には恨まれ、親戚にも顔向けできなくなり、仕事も失敗、新しい女性ともうまくいかなくなり……。 
 一時の感情が、たくさんの人を不幸にしてしまいます。


(2002年3月ちこり24号、通信欄)





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