世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

フローラ

2019-01-21 04:11:41 | 青空の神話


ルカ・ジョルダーノ

花の女神フローラはユノに、触れば子供を身ごもる不思議な花を教えた。それによってユノは身ごもり、軍神マルスを産んだという。



処女懐胎というか、女性が男性の協力を得ずに子供を生むことは、理屈では可能です。ですが、やるべきではありません。生まれる子供が苦しむからです。一体自分は何の子なのかと。両親の愛によって生まれた子でなければ、子供は自分の存在意義を大きく崩される。それによって痛いことになる子供も多いのです。





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ガニュメデス

2019-01-20 04:12:34 | 青空の神話


ベニグネ・ギャグネロー

トロイアの王子ガニュメデスの美を愛したゼウスは、鷲に化身し、彼をさらってオリュンポスにつれてきた。そこで神々に神酒ネクタールを注ぐ給仕役にしたという。



古代ギリシアの人間たちは、神にも似るかと思うほどの美を与えられていました。それほど美しくない人はほとんどいなかった。それゆえに、その美でかなり奔放なこともしていました。年端のいかない少年を性的対象とする男も相当にいたのです。時にはこうして堂々と美少年をさらっていく男もいた。幼児誘拐の原型です。馬鹿な人たちは、いつもこうして、力の弱い幼い人たちを性的対象にし、犠牲にしてきたのです。ガニュメデスはオリュンポスなどにいない。おそらくどこかにそのまま捨てられてしまったのでしょう。





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復活

2019-01-19 04:11:57 | 青空の神話


ヘーラルト・セーゲルス


婦人たちは、安息日のおきてに従って休んだ。そして、週の初めの日の明け方早く、準備しておいた香料を持って墓に行った。見ると、石が墓のわきに転がしてあり、中に入っても、主イエスの遺体が見当たらなかった。そのために途方に暮れていると、輝く衣を着た二人の人がそばに現れた。婦人たちが恐れて地に顔を伏せると、二人は言った。「なぜ、生きておられる方を死者の中に捜すのか」

(ルカによる福音書)



キリストの復活の神話は、子供の甘えのような嘘です。大切な人を殺してしまった罪から、簡単に逃げたいと思う人間の、甘い夢です。実際はもちろん、イエスは復活などしませんでした。死体は辱められたあとに墓に納められ、そのまま朽ちていったのです。霊魂はその故郷に帰り、地上にはかえってこなかった。人間の肉体は、一度死に染まれば生き返ることはありません。しかし人間の魂は時にその喪失と罪への脅えに耐えきれず、こういう夢を描いてしまうのです。あの人は本当は死ななかったのではないかと。或いは、死からもよみがえることができるほど、すばらしい人なのではないかと。こうして、イエスを神に押し上げる神話が作られていったのです。





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ガラテア

2019-01-18 04:13:31 | 青空の神話


ギュスターヴ・モロー


海神ネレウスの娘、美しいガラテアはアーキスと恋に落ちたが、ガラテアに恋した一つ目の巨人ポリュペモスに嫉妬され、アーキスを殺されてしまう。



この絵は一つ目の巨人(キュクロプス)ポリュペモスがガラテアに一目ぼれするシーンが描かれています。影から彼女を見る目が真剣そのものだ。たったひとつしか目がないことがまた印象的です。一つの目は、バランスをとるなにものも存在しないことを意味する。恋したら、それをとめるものがない。馬鹿になって追いかけ、すべてを駄目にしてしまうまで止められないのです。ガラテアはポリュペモスの子を産んだという話もあるそうですが、それは真実を見抜く力の弱い人の想像だ。ポリュペモスはたいてい、ガラテアを殺してしまいます。たやすく落ちるような女性だったら、男はそこまで好きにならない。かなわぬ恋を思い通りにしようとする男は、必ず女性を殺すのです。





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ヘラとアルゴス

2019-01-17 04:11:51 | 青空の神話


ピーテル・パウル・ルーベンス


度重なる夫の浮気に苦しんだヘラは、百の目を持つ巨人アルゴスによって、ゼウスの浮気相手イオを見張らせた。困ったゼウスはヘルメスに相談した。ヘルメスは笛を吹いて妙なる音楽を鳴らし、それによって少しずつアルゴスを眠らせていった。すると一つ一つ、アルゴスも目は閉じていき、とうとう百の目が全部閉じると、ヘルメスはアルゴスの首を斬り落した。これを悼んだヘラは、アルゴスの百の目をクジャクの羽につけ、世界で最も美しい鳥にしたという。



男というのは女には貞節を求めるくせに自分には決して求めません。ギリシャ神話ではいつも、ヘラは悪役です。ゼウスの浮気を妨害しようとしたり、生まれた子供の邪魔をしたりするが、結局は夫に敗れる。ゼウスは首尾よく浮気を遂げる。女性にとってはあまり気持ちのいい話ではないでしょう。ですがだれも文句を言いません。男が黙らせているのです。しかし、いつまでもこれは通用しない。百眼のアルゴスは滅びたが、真実のただ一つの目は永遠に滅びない。それは恐ろしく滑稽なゼウスの正体を正確に見抜き、それをヘラに教えるのです。そうすればヘラは、たちまちゼウスに愛想をつかして、離縁を迫るでしょう。そうしたら困るのはゼウスの方です。ヘラがいなければ、もう何もないからです。





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プロメテウスの解放

2019-01-16 04:11:29 | 青空の神話


カール・ブロッホ


人間に火を与えたプロメテウスはゼウスの怒りを買い、カフカス山の頂に鎖でつながれ、毎日鷲に肝臓をついばまれるという責め苦を受けた。彼は何百年と苦しみ続けたが、やがてヘラクレスが来て、彼の鎖を打ち壊し、鷲を射殺して、プロメテウス解放した。



火は両刃の剣と言われるように、人間に暖かで豊かな暮らしを与える反面、傲慢の火をもかきたて、あらゆるおぞましい戦いの火もかきたてました。はては原子力の火まで、人間は焚いた。プロメテウスはその罪を問われて永遠に苦しみ続けるわけですが、それを助けるのが人間の英雄だということは、いずれ人間も火を十分に使いこなすことができ、何もかもを正しくやっていくことができるようになる。そのときになって始めて、プロメテウスは解放されるということでしょう。
いつまでも馬鹿ではない。必ず彼らは賢くなる。ただそれまでの年月が、永遠にも似て長いだけなのだ。





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幼児虐殺

2019-01-15 04:11:46 | 青空の神話


ピーテル・パウル・ルーベンス


ユダヤ人の王となると占星術者たちが予言したイエスが生まれた時、それを恐れたヘロデ王は、ベツレヘムとその周辺にいた二才以下の男の子を皆殺しにさせたという。



イエスが生まれた当時、こういうことは起こりませんでした。これはイエスの人生を輝かしいものにしようとした福音書記者の創作です。しかし、これと似たようなことはかつてありました。凡庸な人間の男が、ある年齢以下の子供を皆殺しにしたことはあったのです。あまりに悲惨なことだったので、人間の記憶にそれが刻まれていた。その伝説が、イエスの神話に反映したものでしょう。そのとき、子供を皆殺しにした男たちは、もう永遠に自分の子供は生まれなくなったそうです。





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サラスヴァティ

2019-01-14 04:11:54 | 青空の神話


画家不詳


ヒンズーの創造神ブラフマーの妻。ブラフマーはある日自分の体からサラスヴァティを作りだしたが、そのあまりの美しさのため、妻にしようと追いかける。サラスヴァティは逃げるが、ブラフマンのしつこさの前に折れて妻となる。彼らの間に人類の始祖マヌが誕生した。水と豊穣の神。弁財天とも言われる。



インドのヴィーナスですね。ご承知のことと思いますが、わたしたちは弁財天という地名のあるところに住んでいます。何やら神の意図を感じますね。サラスヴァティはサラスヴァティ川の化身とも言われた。水の泡から生まれたヴィーナスと共通するところもあります。かのじょは大きな川辺の町で生まれた。川が好きでした。今住んでいる町にも不思議な川がある。
水と女性は縁のきれないものです。女性は常に水のように豊かに住んで、すべてを潤していく。水がなければ文明は起こりえない。
その神性を表したものが、このような愛と豊穣の女神なのでしょう。





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サビニの女たちの略奪

2019-01-13 04:11:55 | 青空の神話


ピエトロ・ダ・コルトーナ


ローマが建国されたばかりのころ、女が少なかった。そこでローマ人たちは近隣のサビニ人たちと交渉したが不首尾に終わった。そこでローマ人たちは一計を案じ、無理矢理サビニの若い女たちを誘拐した。サビニの女たちはローマ人の男たちと結婚させられ、ローマ人の子供を生むことになった。後にこのことを恨んだサビニ人たちがローマ人に戦争を挑んだとき、もうローマで家庭を築いていた女たちは、戦争を止めに走ったという。



伝説ではありますが、こういうことがなかったことはありません。事実上女性というのは男にとって資源に等しかった。手に入れられないのならと無理矢理もののように奪ってきたこともあったのです。女性たちは従うよりなかった。つらい思いを飲み込んで、許すしかなかったのです。このようなことはいずれ男たちに返っていく。略奪したくとも、その資源がなくなるのです。男性があらゆることをして女性を貶めてきた結果、誰も女性を生きなくなってしまう。男が欲しい女性の愛を表現してくれる女性が、だれもいなくなるのです。





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聖アグネス

2019-01-12 04:11:45 | 青空の神話


ホセ・デ・リベラ


アグネスはローマの上流階級の娘だったが、たくさんの縁談を拒んだため、キリスト教徒として告発された。そして異郷の女神に供物をささげることも拒んだので、売春宿に売られることになった。アグネスは衣服をはぎとられ、裸のまま売春宿に売られたが、そのとき彼女の髪が足まで伸びてその裸体を隠した。売春宿では待っていた天使たちが彼女を守り、だれも彼女に手を出すことができなかった。アグネスは処刑されることになり、剣で突き刺されて13歳で殉教した。



強姦被害者の守護聖人とも言われる聖女の伝説です。実際はこのように、神や天使の加護はなかったでしょう。そのようなものが得られるには、実に高いことをせねばならないからです。普通の女性は、男性の暴力に圧倒されるしかなかった。傷ついていく女性はたくさんいました。わがままな男たちは、自分の言うことを聞かないというだけで女を憎み、無理矢理犯した上で殺すのです。アグネスもまたその犠牲者のひとりでしょう。男性はこの事実から逃げることはできません。自分もまた、アグネスのような目に合わなければならないからです。





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