ご無沙汰しております、もとすけです。
今週は、先週ほどは締め切りイベントは詰まっていないものの、火曜日に修士論文を修了審査の担当教員全員に提出、同日から審査会の発表練習が始まり、大詰めの慌ただしい日々を送っています。
今日(木曜日)も、教授と准教授の前で発表練習をしましたが、研究成果発表自体は制限時間内にこなせるようになってきたものの、質疑応答で痛い質問をされたときの対応にまだ難有りです・・。想定問答集をしっかり作って対応を練習しておかねば。でもまあ、先週の修羅場的状況からは脱し、発表本番までにだいぶ精神的・時間的余裕が出来てきたので、このまましっかり準備を続けていけば失敗はないと思っています。
頑張れ、私。
さてさて、気分転換を兼ねて記事を書いてまいりましょう。
今回は、前回の記事の続きで、フェリー「ゆうかり」の操舵室見学のお話です。実は、私にとっての船内見学の目当てはこちらだったりします。
前回紹介した、5階特等フロアの廊下を船首側に進み、突き当たりを右に折れたところにある非常ドアから操舵室脇の通路に出ました。多分、普段は出入り禁止になっているはずです。私は旅客フェリーの操舵室見学は初めてなので、胸が高鳴ってきました。
操舵室ウイング。
操舵室を含む船の操縦指揮所のことを船橋(せんきょう、ブリッジ)とも呼びます。船橋という言葉は、船の右舷と左舷を橋渡しするような細長い構造から付いたとされており、このフェリー「ゆうかり」でも船の舷側に両端が突き出た構造になっています。両端の突き出た部分をウイングと言い、岸壁への接岸時には、船長がここで操船の指揮を行います。昔はマイクで操舵室内に指示を送っていたそうですが、現在ではウイングにジョイスティック式操縦装置(写真右に写っている、手すりが付いた箱に収納されている)が設置されていて、微妙な舵取りや速力の調整も船長がここで直接行えるようになっています。
ちなみに、新日本海フェリーでは伝統的にウイングは露天だったのですが、この船では前面がガラス窓で塞がれるようになり、さらに新しい「はまなす・あかしあ」では後ろ側も壁で覆われるようになって、ウイング部が完全に屋内になりました。冬の日本海の寒さ対策かもしれませんが、他の地域の船でも同様の傾向が見られるので、最近の客船の流行なのかもしれません。
ウイングの窓から船尾側を眺めた様子。
さすがに見通しが良く、特等やスイートのベランダが船尾側まで続いている様子が見えます。
この船の船橋は船首から32m、船尾から168m、海面から20m程の位置にあります。接岸時は、この位置から168m先の船尾の動きを確認し、毎回寸分の狂いもなく地上の自動車スロープなどと接続させるのですから、操船技術は神業的ですね。
さあ、いよいよ操舵室の中に潜入です。これまで私が見てきた中で最も広々とした操舵室でした。
カーペットも敷かれていて、居住性が良いです。
ちなみに、このフェリー見学に引き続いて見学した、海上保安庁巡視船「しれとこ」(1978年竣工)の操舵室がこちら。船の全幅が9.6mで、26.5mある「ゆうかり」の半分以下ですし、船の前後方向の奥行きも狭くなっています。機能性第一という感じがしますね。
「ゆうかり」の操舵室から船首方向を見下ろすと、やはりフォワードサロンから眺める景色よりも高さを感じました。船首の先には、小樽港を荒波から守る小樽港外洋防波堤が見えています。実は100年も前に造られた、歴史ある建造物です。
操舵装置。
最近の船の操舵装置は、操舵輪ではなく、飛行機の操縦桿のような形のハンドルが付いています。針路を一定方向に取り続けるオートパイロット機能が搭載されています。外国船などだと、メインの操舵装置もジョイスティック型になっていて、座席に座って操船したりしますが、まだ日本の船では立ちながらの操船が一般的です。
ナビゲーションモニター
船の針路や航速、現在地の緯度・経度から水深までが表示されています。船の操舵に必要な情報がこの画面に凝縮されているわけです。
エンジンテレグラフ。
この船には独立した機関室が設けられていますが、通常、速力はこのテレグラフを用いて操舵室から遠隔で操作します。本船は14400馬力のディーゼルエンジンを2基搭載しています。敦賀や舞鶴航路の高速船では、65000馬力ものエンジンを積んでいるのに比べると弱く感じますが、それでも大型バス40台分以上の馬力に相当します。スクリューには可変ピッチプロペラ(4翼)を装備しており、エンジン回転数は一定のままで、エンジンテレグラフでプロペラのピッチを調整することで前進・後進・速力を調節します。
機関モニター画面
機関関係の様々なデータが表示されています。
サイドスラスタ操作盤。
フェリー「ゆうかり」は全長200mもある大型船ですが、定期航路に就く船なので、自力で岸壁に接岸可能な動力装置を搭載しています。それがサイドスラスターです。本船の場合は船首側に2つ、船尾側に1つの計3台の左右移動専用のプロペラが備えられています。
フィンスタビライザ操作盤。
フィンスタビライザは外洋での安定航海に重要な横揺れ防止装置です。船体から翼を張り出して、水流に対する揚力で船体動揺を抑えます。冬の日本海は壮絶に荒れますから、この装備がないと定期運航はまず難しいでしょう。
船内電源・通風操作盤
カーフェリーは多数のトラックや自動車を搭載します。中には、生鮮食品などの保冷車も含まれており、航海中は車両のエンジンを停めるため、船側からそれらの車両に電気を供給しています。船にとって漏電火災は大変危険な事態なので、それを防ぐために漏電監視装置が操舵室内に設置されています。また、同じ操作盤上に、カーデッキの通風操作スイッチも並べられています。
レーダーモニター。
本船は自動衝突予防装置を備えたレーダーを2台備えています。右の画面には小樽港周辺の近海、左の画面には半径100kmほどの広範囲の様子が映し出されていて、その範囲内にいる様々な船の位置や速力、航跡が示されています。
電子海図モニター。
最近の船では、レーダーに加えて電子海図装置も備えています。GPSによって船の現在位置が示されており、自船の航跡や周辺の水深、海底の状態(砂や岩場など)、灯台の位置などが把握できます。レーダーとの組み合わせにより、夜間でも安全に航海が出来るわけです。
コーヒーセット。
操舵室内には流し台も設置されています。集中力を要する立ち仕事ですから、コーヒーは欠かせないのでしょう。
天気予報図
安全な航海には天気予報が必須です。ファックスで常に最新の天気予報が配信されてきます。通常の24時間・48時間予報に加えて、波浪や台風、高層空気の予報も確認されます。
運航基準図
小樽~新潟航路は敦賀・舞鶴航路と比べるとかなり沿岸側を航海します。積丹半島沖での転針後、新潟までほぼ直線的に進みます。
神棚
様々な最新鋭の航行装置を備える本船でも、神棚がちゃんと設置され、拝まれています。大浴場と並んで、日本船ならではの設備ですね。
と、ここまで操舵室の設備・装置を紹介しましたが、実際にはもっと多くの計器やスイッチで操舵室は溢れています。これらの装置を何人もの航海士の方達が協力して操作することで、大型フェリーは運航されるのです。航路上には北の漁場が存在し、絶えず他船との衝突の危険がある中で、毎日無事に運航しているのですから、本当に尊敬に値する仕事ですね。
今週は、先週ほどは締め切りイベントは詰まっていないものの、火曜日に修士論文を修了審査の担当教員全員に提出、同日から審査会の発表練習が始まり、大詰めの慌ただしい日々を送っています。
今日(木曜日)も、教授と准教授の前で発表練習をしましたが、研究成果発表自体は制限時間内にこなせるようになってきたものの、質疑応答で痛い質問をされたときの対応にまだ難有りです・・。想定問答集をしっかり作って対応を練習しておかねば。でもまあ、先週の修羅場的状況からは脱し、発表本番までにだいぶ精神的・時間的余裕が出来てきたので、このまましっかり準備を続けていけば失敗はないと思っています。
頑張れ、私。
さてさて、気分転換を兼ねて記事を書いてまいりましょう。
今回は、前回の記事の続きで、フェリー「ゆうかり」の操舵室見学のお話です。実は、私にとっての船内見学の目当てはこちらだったりします。
前回紹介した、5階特等フロアの廊下を船首側に進み、突き当たりを右に折れたところにある非常ドアから操舵室脇の通路に出ました。多分、普段は出入り禁止になっているはずです。私は旅客フェリーの操舵室見学は初めてなので、胸が高鳴ってきました。
操舵室ウイング。
操舵室を含む船の操縦指揮所のことを船橋(せんきょう、ブリッジ)とも呼びます。船橋という言葉は、船の右舷と左舷を橋渡しするような細長い構造から付いたとされており、このフェリー「ゆうかり」でも船の舷側に両端が突き出た構造になっています。両端の突き出た部分をウイングと言い、岸壁への接岸時には、船長がここで操船の指揮を行います。昔はマイクで操舵室内に指示を送っていたそうですが、現在ではウイングにジョイスティック式操縦装置(写真右に写っている、手すりが付いた箱に収納されている)が設置されていて、微妙な舵取りや速力の調整も船長がここで直接行えるようになっています。
ちなみに、新日本海フェリーでは伝統的にウイングは露天だったのですが、この船では前面がガラス窓で塞がれるようになり、さらに新しい「はまなす・あかしあ」では後ろ側も壁で覆われるようになって、ウイング部が完全に屋内になりました。冬の日本海の寒さ対策かもしれませんが、他の地域の船でも同様の傾向が見られるので、最近の客船の流行なのかもしれません。
ウイングの窓から船尾側を眺めた様子。
さすがに見通しが良く、特等やスイートのベランダが船尾側まで続いている様子が見えます。
この船の船橋は船首から32m、船尾から168m、海面から20m程の位置にあります。接岸時は、この位置から168m先の船尾の動きを確認し、毎回寸分の狂いもなく地上の自動車スロープなどと接続させるのですから、操船技術は神業的ですね。
さあ、いよいよ操舵室の中に潜入です。これまで私が見てきた中で最も広々とした操舵室でした。
カーペットも敷かれていて、居住性が良いです。
ちなみに、このフェリー見学に引き続いて見学した、海上保安庁巡視船「しれとこ」(1978年竣工)の操舵室がこちら。船の全幅が9.6mで、26.5mある「ゆうかり」の半分以下ですし、船の前後方向の奥行きも狭くなっています。機能性第一という感じがしますね。
「ゆうかり」の操舵室から船首方向を見下ろすと、やはりフォワードサロンから眺める景色よりも高さを感じました。船首の先には、小樽港を荒波から守る小樽港外洋防波堤が見えています。実は100年も前に造られた、歴史ある建造物です。
操舵装置。
最近の船の操舵装置は、操舵輪ではなく、飛行機の操縦桿のような形のハンドルが付いています。針路を一定方向に取り続けるオートパイロット機能が搭載されています。外国船などだと、メインの操舵装置もジョイスティック型になっていて、座席に座って操船したりしますが、まだ日本の船では立ちながらの操船が一般的です。
ナビゲーションモニター
船の針路や航速、現在地の緯度・経度から水深までが表示されています。船の操舵に必要な情報がこの画面に凝縮されているわけです。
エンジンテレグラフ。
この船には独立した機関室が設けられていますが、通常、速力はこのテレグラフを用いて操舵室から遠隔で操作します。本船は14400馬力のディーゼルエンジンを2基搭載しています。敦賀や舞鶴航路の高速船では、65000馬力ものエンジンを積んでいるのに比べると弱く感じますが、それでも大型バス40台分以上の馬力に相当します。スクリューには可変ピッチプロペラ(4翼)を装備しており、エンジン回転数は一定のままで、エンジンテレグラフでプロペラのピッチを調整することで前進・後進・速力を調節します。
機関モニター画面
機関関係の様々なデータが表示されています。
サイドスラスタ操作盤。
フェリー「ゆうかり」は全長200mもある大型船ですが、定期航路に就く船なので、自力で岸壁に接岸可能な動力装置を搭載しています。それがサイドスラスターです。本船の場合は船首側に2つ、船尾側に1つの計3台の左右移動専用のプロペラが備えられています。
フィンスタビライザ操作盤。
フィンスタビライザは外洋での安定航海に重要な横揺れ防止装置です。船体から翼を張り出して、水流に対する揚力で船体動揺を抑えます。冬の日本海は壮絶に荒れますから、この装備がないと定期運航はまず難しいでしょう。
船内電源・通風操作盤
カーフェリーは多数のトラックや自動車を搭載します。中には、生鮮食品などの保冷車も含まれており、航海中は車両のエンジンを停めるため、船側からそれらの車両に電気を供給しています。船にとって漏電火災は大変危険な事態なので、それを防ぐために漏電監視装置が操舵室内に設置されています。また、同じ操作盤上に、カーデッキの通風操作スイッチも並べられています。
レーダーモニター。
本船は自動衝突予防装置を備えたレーダーを2台備えています。右の画面には小樽港周辺の近海、左の画面には半径100kmほどの広範囲の様子が映し出されていて、その範囲内にいる様々な船の位置や速力、航跡が示されています。
電子海図モニター。
最近の船では、レーダーに加えて電子海図装置も備えています。GPSによって船の現在位置が示されており、自船の航跡や周辺の水深、海底の状態(砂や岩場など)、灯台の位置などが把握できます。レーダーとの組み合わせにより、夜間でも安全に航海が出来るわけです。
コーヒーセット。
操舵室内には流し台も設置されています。集中力を要する立ち仕事ですから、コーヒーは欠かせないのでしょう。
天気予報図
安全な航海には天気予報が必須です。ファックスで常に最新の天気予報が配信されてきます。通常の24時間・48時間予報に加えて、波浪や台風、高層空気の予報も確認されます。
運航基準図
小樽~新潟航路は敦賀・舞鶴航路と比べるとかなり沿岸側を航海します。積丹半島沖での転針後、新潟までほぼ直線的に進みます。
神棚
様々な最新鋭の航行装置を備える本船でも、神棚がちゃんと設置され、拝まれています。大浴場と並んで、日本船ならではの設備ですね。
と、ここまで操舵室の設備・装置を紹介しましたが、実際にはもっと多くの計器やスイッチで操舵室は溢れています。これらの装置を何人もの航海士の方達が協力して操作することで、大型フェリーは運航されるのです。航路上には北の漁場が存在し、絶えず他船との衝突の危険がある中で、毎日無事に運航しているのですから、本当に尊敬に値する仕事ですね。