いよいよ明日、2016年の音楽祭が開催します。
この音楽祭は、宇奈月温泉街がモーツァルトの故郷、ザルツブルクに佇まいが似ている、というところから始まりました。
こじつけのような感じもあるのですが、モーツァルトの響きが風や水が生み出す1/fゆらぎという特徴をもっているとか、宇奈月ビールの醸造にモーツァルトの音楽を聴かせるとおいしくなるとか、黒部峡谷の開発の初期にザルツブルクの技術者が関わっていたとか、黒部峡谷やら温泉やら風物やら風土やら、スキーや鉄道など、さまざまな関わりを見つけられるようになっていきました。
実際、モーツァルトの調べが街にあふれると、ずっと前からそうだったかのような不思議な調和が広がったのです。
ホールでのコンサートを中心にした音楽会ばかりでなく、宇奈月の街の素晴らしさを音楽を通して描こうということから、個性的で特徴のある温泉街で行われる「街角コンサート」や、ホテルや旅館のロビーを使った「ロビーコンサート」が考え出されました。
音楽会をつくるのは、街であり、人である。
それは、いかにも貴族ばかりでなく、市民が楽しめる音楽を生み出し続け、人間的な伝説にあふれるモーツァルトにふさわしいもののように思えました。
それらのコンサートは、できるだけ多くの人に開放したい。モーツァルトさえ演奏すれば、プロでもアマでも、老若男女を問わず、誰でも参加できる音楽祭にする。こうして最初のコンセプトができあがります。
だけど、モーツァルトの楽曲がもつ素晴らしさや可能性も味わいたい。それが、プロ演奏家による「ホールコンサート」です。
街角コンサート
ロビーコンサート
ホールコンサート
3つのコンサートに、どさくさまぎれに、おいしいモーツァルトだのなんだのとお楽しみが加わって、最初の音楽祭が始まりました。
まだ、誰も見たことがない光景に、PVもつくっちゃえと勢いで作ったものは、youtubeで流しているものです。
それでも、なかなか感じがつかめない。
一番最初のコンサートは、樹徳寺のフルートによるお勤め。早朝でした。
お寺、フルート、住職、モーツァルト、お勤め。この組み合わせ自体が不思議な違和感と調和を生み出していました。
午前10時。宇奈月温泉駅、現在の温泉噴水広場に、ドレスの女性が4人現れました。
フルートとクラリネットの演奏が始まります。
電車、チロル風の駅、観光客、観光客、土産物屋さん、温泉噴水、観光バス、行き違う車、ホテルや旅館ので向かいの人、電車の乗降客、地元のみなさん、何だかわからないけれど通りかかった人たち。みんながこの音楽祭の風景を見つけました。
いいじゃないか。モーツァルトか。タオルもあるんだ。温泉だもの。
ここから広がりました。
セレネ1階ロビーで、きらきら星変奏曲の演奏を終えた、その頃小学校3年生の松田わこさんが「来年も音楽祭に参加したい」とにこにこ顔であいさつしました。
1回目の最後の演奏会は、延対寺荘のロビーコンサート。
秋の引き締まった空気の中で、最初は全く見えなかった2回目の開催が輪郭をはっきりさせながら描かれていきました。
7回目になります。
演奏場所が増えました。
オーケストラが生まれました。カルテットが生まれました。
トークショーがあります。オーストリア大使館の人も来ました。
オープニングオペラが始まりました。
ビールも飲んで、ワインも飲んで、あれもあってこれもあって、それぞれのモーツァルト音楽祭が広がっていきます。
まだ、歩けない赤ちゃんの参加がありました。地元の小学生や中学生も参加します。
Tシャツやらグッズもたくさん出てきました。
キャラクターも作って、アマデウナヅキンはザルツブルクやウィーン、ドイツやイタリアにも行ってきました。
雪像も作って、雪のカーニバルに参加しました。
マラソンのファンファーレもやって、今度は、北陸新幹線駅でも演奏します。
参加者の一人だった塚田尚吾さんがオーケストラと共演しました。ソロリサイタルしました。今回は、仲間を連れて演奏します。
時間の流れで、変化したもの、大きく育ったもの、移ろいの中で、さまざまな表情を見せますが、人と街が織りなす音楽祭のコンセプトによる表現は変わりません。
会場においでにならなくても、ネットやSNSで気にかけていただいているみなさんがあります。
たくさんの方から協賛金の応援をいただいています。
それぞれのかかわりかたがつながり、結び合って音楽祭をつくりあげています。
今年は、どんな音楽風景で出会えるのでしょう。
みなさん、ぜひ宇奈月でお会いしましょう。