ニックのお気に入りワイン、ポムロール。「純粋で、しなやかで、艶とまろやかさをもつ惜しみない熟した果実味と、みずみずしい、絹のような個性が評価されている。」だそうだ。これはシャトー・ド・サルだが、昔ニックはワインの競売へ行き、シャトー・ペトリュスのポムロールを箱で買った経験があるそうだ。一本三十万円！ 死ぬまでに一度は飲んでみたいワインだ。
私のこれまでの生涯で一番高価なワインは、1978年シャトー・ムートン・ロートシルト。一本十万円。ニックが私と日本に引っ越す前、NYの親友夫妻が、NY郊外にある有名人がピクニック（お忍びデート）に行く有名なレストランにて、フェアウェルディナーを設けてくれた。NY商業音楽界のドンである親友のワインコレクションから、ニックに最も相応しい一本が選ばれた。シャトー・ムートン・ロートシルトは、ニックの師グレゴール・ピアティゴルスキーの妻のロスチャイルド家のワインで、1978年はニックがチャイコフスキーコンクールに優勝した年だから。このワインと共に頂いた雉や茸が素晴らしく紅葉が美しかったのを覚えている。私のNY社交界デビューはこの時であり、その後すぐ日本に出発したので、それが最初で最後となった。
