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突然積もった。あっという間に、五合目ステーションが、銀世界になった。
わが家の四駆で麓から走ってると、馬返し過ぎて、狩休の辺りから、みんな道端に止めてチェーン巻いてる。うちらチェーン持ってへん。
帰ろう。
今こそこの車の性能を試すときだ。
いやいや。テスト走行やってる場合ちゃうって。だめだったら帰れなくなるよ。 チェーン買って出直そ。
大丈夫だ。何のため、どでかい四駆買ったと思うんだ。しかも○○ロックだぜ。これ使う機会なかったんだ、ひゃっほう‼今日はついてる、レッツゴー!
ええええ⁈
言ってる間に、五合目に来てしまった。富士は白く大きく、空は青く、容赦なく見える。行きはよいよい帰りは怖い、という歌が脳内リピート。
登り口も凍っとる。
私の登山靴はまだしも、ニックのジョギングシューズがつるつる滑る。小富士までも行けなんだ。
山小屋のご主人が、アイゼンつけなきゃだめ、運動靴じゃ危ない、と言って出てくる。
ハイキングは今日が最後だな。
うん。
記念撮影しよう。
うん。
富士よ、来年の春、また会おう!
と、ニックは満面笑顔。
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登れたら下れる。
という、根拠のない(ような気がする)ニックの言葉だけを頼りに、座席にしがみつき、念仏的なものを唱え、最悪のカーブ三つ下り終えた!
目を開けると、前の道で、オートバイの男性が滑って転んでいた。オマイガー。起き上がって、ゾンビになって、ふらふら~と寄ってくる⁉そんな妄想さそう。
ニックが、
手をかしましょうか?
と声をかけて、
いや、大丈夫。とかっこよく手を振るのを見届け、またじりじり下る。
私また念仏。
ぶじ下りてから、ニックが言った。
きみ楽しかったろ?
ええええ⁉(んなわきゃないやん~)
だってクリスマスソング歌ってたろ?
うっそう?
無意識に私は恐怖から逃げようと、昔覚えた英語の童謡を繰り返し歌ってたらしい。
The first day of Christmas My true love sent to me
から始まる、クリスマス前の12日間の数え歌。Five golden rings~というのがサビ。
それ以外は歌詞覚えてないんで、ずうっと、ナナナナナ、ナナナナ、ナナナナナ、Five golden rings~を繰り返し。でも、これ効くんだよね。
私的にこの歌は恐怖から最も遠いところにあり、楽しい思い出もありGood!
とにかく下界に降りて来られた。
紅富士温泉でショックを癒やす。
生きててよかった。
さあ、スキーシーズンの始まりだ‼
と、ニックが叫んだ。