ピアティゴルスキーの最後のピアニストだったDが、アラスカの音楽祭から帰ってくる。旅に行くとき、いつもうちの前に車を停める。腰の痛い先生の代わりに、彼女を迎えに行き、駅前でドーナツ買って帰る。先生は、美人インストラクターにほめられ、調子に乗ってビクラムやり過ぎて筋を痛めた。ビクラムヨガの特徴は、汗を大量にかくこと。ふだん汗をかけない私も、汗の玉が盛り上がってぴゅっと吹き出すのが見えるくらい汗をかく。筒井康隆の「薬菜飯店」みたい。90分後、顔が一回り小さくなってる。
私は汗が好きだ。とくに女の人が胸の谷間や背中に汗をかいてるのは美しい。
Dに煎茶をいれてあげる。三人でドーナツ食べながら、トスカニーニやクライバーを見る。チェリビダッケが禅と茶に心酔してたという話を聞く。
アンドリューからeメールが来る。「いまチリからロスへ帰る飛行機の中だよ。」とある。ピアノ伴奏の仕事もいいが、スキーインストラクターもいいな。世界中の山を転々と暮し、ときどき町に下りて遊ぶ。リフトの上で彼は、「雪は毎日違う。明日の雪はどうかなって思いながら寝るときが一番楽しい。」と言った。それも一期一会だよね。
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