12月10日のNY金は3営業日続伸した。来週に控える米連邦公開市場委員会(FRB)を前に、直近2カ月下げ渋り傾向を見せているインフレ動向を見る11月米消費者物価指数(CPI)の発表を前に、株式市場はじめ金融市場全般が模様眺めの中で、金市場は続伸した。
ここにきて新たな動きが見られている中東情勢や先週発表が続いた新興国中央銀行による継続的な買いが確認されセンチメントを押し上げている。通常取引は前日比32.60ドル高の2718.40ドルで終了。終値ベースでは11月5日以来約1カ月ぶりの高値となる。11月5日といえば米大統領選挙投票日。つまり過去最高値(終値2800.80ドル)にはまだ幅はあるものの、米大統領選前の水準に戻りつつある。果たして市場環境が変化している中で、この水準を維持できるのか否か。
金市場の内部要因から分析するに、2700ドル超まで買い上げた主体は先物市場でのファンドの買いだ。ファンドはCTA(商品投資顧問)と呼ばれる目先筋を中心に、11月大統領選以降3週に渡り重量換算で約150トンものポジション解消の売り(手じまい売り)を出した。その後2週に渡り徐々に買いに転じ、その数量は約50トンに上っている。そして昨日10日までの1週間もファンドの買いが続いているとみられる。つまりポジション解消で身軽になったファンドが、目先の買い手掛かりに飛びつくかたちで買いを広げ、反転相場につながっている。
シリアのアサド政権崩壊で中東情勢は新たな展開に入っている。伝えられているように反政府勢力は25年3月1日を期限に暫定政権を樹立したとされる。一方で政権移行の混乱に乗じる形で国境を接するイスラエルはすでにシリア領内に軍を進め、320以上の「戦略的目標」を攻撃したとされる。従来は国境地帯ゴラン高原にシリアとの停戦協定に基づき緩衝地帯を設けていたが、それを超えて進撃と伝わる。停戦協定は相手方政府崩壊で消滅が理由とされ、シリア政府軍の武器が国際テロ組織に渡ることを阻止するのが目的とされる。
いずれにしても、さらなる中東情勢の不透明化が、足元の金市場ではファンドの買い手掛かりとなっている。
ただし、この手の買い手掛かりは賞味期限が短いのが経験側が教えるところでもある。 果たしてどうなるか。ちなみにNYの金ETF(上場投信)の残高は減っている(売られている)。
金融環境という点では、今後の米利下げ政策の行方がどうなるか、来週のFOMCでは政策決定とともに25年以降の見通しが示される。その手掛かりとして、本日の米11月のCPIに注目が集まっている。国内価格は円安プレミアムが再び目立っている。