NY金は小幅ながら連日1900ドル方向に水準を切り下げながら相場は進行している。
前日からポルトガルの保養地シントラで開催されている、欧州中銀(ECB)年次フォーラムに参加した欧米中央銀行トップのインフレ抑制の積極利上げ発言に、28日も売り優勢の流れが続いた。
28日は日米英欧の総裁によるパネル討論が開かれ、やはり注目はパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の発言に集まった。議長は大半のFRB当局者が年内あと2回の利上げを見込んでいると述べ、次回7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを実施する可能性を否定しなかった。
発言内容自体は、前回の連邦公開市場委員会(FOMC)でのものと同じだが、このところ発表されている米経済指標に強気のもの続いていることから、タカ派トーンが上がっている印象で、為替市場ではドルを刺激し、金は売られやすかった。
もっともパウエル議長は、かねがね政策判断は経済がどのように推移するかによって決定されるとしてきているので、予想以上に堅調な経済指標が続いている足元の状況下では強気のトーンにはなるのは理解できる。
インフレについては「想定していたよりもしつこい」とした上で、今後の利上げは1会合置きに実施する可能性もあるとする一方で、「連続で実施することを選択肢から決して外さない」とも答えた。
こうした発言を受けてNY金は、NY午前の早い段階で直近の安値を更新し一時1911.40ドルまで売られ、これがこの日の安値となった。終盤にかけては買戻しの動きが見られ、通常取引は前日比1.60ドル安の1922.20ドルで終了。ただし、その後の時間外では売り直される形で下値を探り、この日の時間外取引は1916.50ドルで終了した。3月中旬以来約3カ月ぶりの安値となる。
今週は明日30日に重要なインフレ指標の米個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表される。食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターがFRBの注目指標であることはよく知られている。強めの結果となると改めてパウエル議長の発言を蒸し返す形で、NY金には売り圧力が高まりそうだ。しかし、内部要因的にはNY金先物取引のファンドの買い越しは、重量換算で直近ピークの5月9日からは200トンほど減っており、一定の整理は進んでいる。