亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米雇用統計を受けた売りは一巡、インド金の輸入関税突然の引き上げ

2019年07月09日 23時29分45秒 | 金市場
予想以上に強かった米雇用統計の影響が残る市場では、次の方向性を探る手掛かり探しが金市場のみならず市場全般で始まっている。この点で報じられているように今週は10-12日に年に2月回のパウエルFRB議長の議会証言が予定されている。また同じ10日には、先月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表されることになっている。発表は日本時間では11日の早朝。FRBは先週5日に議会に提出する金融政策報告書を公表しており、今回の議長の報告もこの内容に沿ったものになりそうだ。

報告書では「米経済の成長は1~3月期こそ強かったものの、最近は減速の兆しがある」と指摘している。貿易戦争などで「設備投資が鈍化した」と警戒感をにじませ、「景気見通しをめぐる不確実性が増大しており、経済成長の持続へ適切な行動をとるだろう」とした。市場では雇用者数こそ大きく増えたものの、賃金上昇に加速が見られないなどインフレも抑えられていることもあり、今月末のFOMCでの0.25%(25bp)の利下げの織り込みが進んでいる。

むしろ株式市場などは仮に利下げが見送られた場合には、大きく反動安に見舞われる可能性も否めず、FRBは先読みする市場に政策発動を縛られている感は否めない。

金市場の話題では、先週末5日にインドの財務省が新年度の予算発表に際して金、銀、プラチナの輸入関税の引き上げを発表した。現行10%に対し2.5%引き上げ12.5%にし、即発効という、まさにサプライズ。当初1%だった輸入関税を段階的に引き上げ10%になった時には、密輸が急増した経緯があり、それはいまも同じと思われる。それゆえ宝飾業界は輸入関税引き下げに向けたロビー活動を活発化させ、むしろ引き下げを期待していた。

そもそもインド政府が金をはじめ貴金属に輸入関税をかけるのは、経常収支の赤字が一向に減らないことがある。インドは金額ベースで見た輸入品のトップが原油となっている。産油国ではないので、これはわかりやすい。しかし一般の国では信じられないが、2位が金となっている。政府としては、経済のサポート要因にならない金輸入が貿易の2番手に登場し赤字拡大をもたらしていることが、我慢ならない。それで課税を始めたが、金輸入の抑制効果は小さく、国民はむしろ密輸に走った経緯がある。
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