今回は、音楽記事です。
“今年で50周年を迎える名盤”の流れを継承していきます。
プログレというところからはもう完全に離れますが……今回のテーマは、フェイセズの『ウー・ララ』です。
フェイセズは、フーと並んでモッズを代表するバンドだったスモールフェイセズがもとになっています。
スティーヴ・マリオットの脱退という事態を受けて、ジェフ・ベックグループをやっていたロッド・スチュワートとロン・ウッドを迎えて生まれ変わったバンドが、フェイセズということになります。
厳密にいえば、その途中に「クワイエット・メロン」というバンドがあって、ここにはロン・ウッドの兄であるアート・ウッドなども参加していましたが、このバンドは一枚のアルバムを出すこともなく消滅し、幻のバンドに。そしてそれが発展して、フェイセズとなりました。
そのフェイセズの最後のスタジオアルバムが、『ウー・ララ』。
代表作といってもいいでしょう。
レコード発表時、このアルバムジャケットは人物の目を動かすことができるというギミック仕様になっていました。こういうセンスに、モッズの無軌道感とつながるところがあるかもしれません。
その収録曲として、「いとしのシンディ」のライブ動画を載せておきましょう。
Faces - "Cindy Incidentally" live - February 24, 1973 LWT Studios, London UK TV "Russell Harty Plus"
先ほど、この『ウー・ララ』がバンド最後のスタジオアルバムになったと書いたように、このアルバムはフェイセズ解散の引き金になった作品でもあります。
スーパーバンド的なかたちで登場したフェイセズでしたが、バンドと並行してソロシンガーとしても活動していたロッド・スチュワートの存在感がどんどん大きくなっていき、ほかのメンバーが添え物扱いのようになったことで、メンバー間の関係がぎくしゃくしていたようで……これがつまりはバンド内の権力闘争みたいなことにつながったようです。
本来バンドの中心人物であるロニー・レインの主導で制作されたこのアルバムを、発表後にロッド・スチュワートが批判したことで、亀裂は決定的なものになりました。ロニー・レインはバンドを脱退し、軸を失ったバンドは空中分解していくのです。
その後、ロッド・スチュワートを前面に押し出してロッド・スチュワート&ザ・フェイセズとして活動し、日本人ベーシスト山内テツを迎えて活動を継続しましたが……しかし、そうした弥縫策ではいかんともしようがなく、フェイセズは消滅してしまいました。
フェイセズ自体はそこまでビッグな存在となりませんでしたが、後のロック史には大きな影響を与えているともいわれます。
パンク系のアーティストのなかには、フェイセズに影響を受けた人も少なくないとか。
いわゆるモッズはパンクに影響を与えたといわれますが、そのモッズを代表するバンドの一つであるスモール・フェイセズから派生したフェイセズもまた、そういう雰囲気があったということでしょう。
また、そうした間接的影響にとどまらず、フェイセズにいた人たちはもっと直接的なかたちで後にロック史のいろんなところに顔を出してきます。
ロン・ウッドがローリング・ストーンズに参加しているというのが、その代表的な例でしょう。ロッド・スチュワートもいろんなところに出てきますが、ドラムのケニー・ジョーンズがキース・ムーン亡き後のフーに参加したりもしています。ケニーは、フーのドラムとしてライブエイドにも参加しました。
その姿を確認できる動画を一つ。
The Who - Won't Get Fooled Again (Live Aid 1985)
また、鍵盤のイアン・マクレガンも、セッションミュージシャンのようなかたちで幅広く活動。ストーンズが電子音を取り入れた作品として知られる
Miss You
という曲がありますが、その電子ピアノを弾いているのはイアン・マクレガンということです。
Miss You (Remastered)
また、ロニー・レインは、1983年のARMSコンサートで主催者的な立場にいました。
彼は多発性硬化症という難病を患っており、その研究を支援する目的でチャリティ・イベントを計画。それが、ARMSコンサートです。
この場で、いわゆる三大ギタリストの初共演があったというのは、以前このブログで書いたと思います。
それとは別に、ジミー・ペイジが『天国への階段』をやってる動画がロニー・レインのチャンネルにあったので、それを載せておきましょう。(ボーカルはなし)
Jimmy Page Solo ~ Stairway To Heaven Ronnie Lane ARMS Concert 1983
ちなみにロニー・レインは、長い闘病の末、1997年に51歳で死去しています。
最後に……フェイセズは、現在再結成してのニューアルバムを制作中といいます。
結集したのは、ロン・ウッド、ケニー・ジョーンズ、ロッド・スチュワートという顔ぶれ。
ロニー・レインはすでに世を去っているわけですが、ベースはロン・ウッドが兼任というかたちになっているようです。彼は、ジェフ・ベック・グループではベースを弾いていた人なので、そのあたりは問題ないというところでしょう。もう一人のオリジナルメンバーである鍵盤のイアン・マクレガンは2014年に死去。つまり、存命のメンバーは全員集まっていることになります。
ただ、2021年にそういう話が出てきて、今なお制作中ということで、順調に進んでいるとはいいがたい状況です。ロン・ウッドはストーンズの新作のほうもやらないといけないはずなので、そのあたりがどうなのか……本当にこのニューアルバムが完成するかどうかというところも含めて、要注目です。