去る9/22、新橋演舞場へ九月大歌舞伎夜の部を観てきました。
今回はとちり席。よく見えるご機嫌な席で始まる前からテンション高かったです。
1.不知火検校 2幕14場(16:30~19:40)
按摩富の市後に二代目検校 幸四郎
奥方浪江 魁春
指物師房五郎 翫雀
生首の次郎後に手引の幸吉 橋之助
湯島おはん 孝太郎
丹治弟玉太郎 亀鶴
若旦那豊次郎 巳之助
娘おしづ 壱太郎
夜鷹宿おつま 高麗蔵
鳥羽屋丹治 彌十郎
岩瀬藤十郎 友右衛門
母おもと 秀太郎
寺社奉行石坂喜内 左團次
大好きな幸四郎さん演出で36年ぶりの上演とのこと。橋之助さんまでご出演。きや♪
場ごとに気になったことを書きつらねます。
第一幕
第一場 浜町河岸はずれ
ある雨の日の夜、魚屋の富五郎は雨宿りしているあんまが25両持って国許へ向かうと知り、あやまって殺めてしまう。
その時生まれた子供が目が見えない。
この因縁で富市が生まれたってこと?あんまりお父さん、悪い感じがしなかったなあ。
第二場 深川佐賀町富五郎住居
七年後、あんまの修行中の富市。家が貧しいのを母親に嘆く。父親に内緒にと小遣いをやる。
実は客先で金を盗んだり、流しのあんまで儲けたりすることから、師匠からこないよう言われる。
怒った父親は富市を謝りに師匠の元へむりやり連れて行く。
もう七つのころから悪の道へ。両親はそんなことないんだなあ。
第三場 浜町河岸
十年後、すっかり成人した富市は按摩富の市として働いていた。
すれ違った若い男女をだまし、1両儲ける。
しかも、親孝行するためと周りの人たちをだますしたたかさ。
巳之助さんと壱太郎さんの若者コンビ。
人のいい若旦那がぴったり、ちょっと面倒なことにかかわらないでよな町娘?の壱太郎さん。よかったなあ(*^_^*)
この場やったかなあ(あやふや)検校さん「仕込み杖でもついて、倍返しでもしてやろう。」とか言いはったんですよねえ。アドリブやったそうですが、この日は「半沢直樹」最終回の日やったから?
むちゃくちゃ笑いました。
第四場 神田佐久間町旗本岩瀬家の居間
旗本岩瀬が留守の間に屋敷を訪れた富の市。岩瀬の妻浪江は富の市の師匠検校から30両を借りようとしていた。それを断るために富の市は来たのだったが、代わりに貸すといい、さらに按摩するといいながら手篭めにしてしまう。
魁春さん、その容姿から今まで敬遠していましたが(すみません)意外と良かったです(ああ、ごめんなさい)。脳内変換できました(ほんとうにごめんなさい)。目が見えないから香りがいいとかなんとか思うのかなあ、とか思ったりして(まだ言うか!)。
第五場 同じ居間
翌日、一夜を明かした二人。そこに主人岩瀬が戻ってくる。
さて、預けた30両を返してくださいと富の市。話が違うと言いたげに浪江は返す。
事実を知らない岩瀬は謡いを聴いて帰れと。またの機会にと富の市。
友右衛門さん上品であほうな旗本、上手いわあ。
しらじらしい、富の市の幸四郎さんとの間が最高。
ええい、だまされた、うううううな魁春さんも良かった(脳内変換済)。
第六場 武州熊谷堤庚申塚
熊谷宿に近い街道。旅人が癪を起こし苦しんでいるところに通りかかった富の市。
旅人が200両を懐に持っていると知ると、針で治しましょうと殺めてしまう。
それを見ていた生首の次郎に半分の100両を渡すと、江戸の口入屋鳥羽屋を訪ねるようすすめ、二人は別れる。
懸命に按摩をしているようでも、殺めるんやろうなあ、ああ、やっぱり刺した。必殺シリーズの主人さんの仕事シーンみたいなワクワク感♪針を刺した後の富の市「はい、これで一生癪は起こりませんよ。」軽い感じで怖いというより、面白い。その感じかとても絶妙。
股旅姿の橋之助さん、かっこいい、オトコマエ!!
第七場
鳥羽屋の屋敷
三年後、鳥羽屋の丹治と玉太郎兄弟と組んで仕事をしている富の市。
次は師匠の家に押し入って金を奪おうという。
おっかない兄弟はついでに富の市もやってしまおうと決心。
弥十郎さんと亀鶴さんのコンビって初めてかも。なんかいい感じ♪
第八場
横山町検校の居間
初午の日の夜。初代検校と妻は寝酒を楽しんでいるところに富の市が帰ってくる。
先にやすむと富の市は別室へ。
検校夫婦が千両箱を開け、小判を眺めているところに鳥羽屋の兄弟が押し入って夫婦を殺めたあと、次に富の市をと思ったとき、生首の次郎とともに富の市が現れる。すべてわかっていた富の市は次郎を江戸に呼び寄せていた。奪った金を奪う悪人たち。
セットが二階建てで、検校夫婦は二階でした。それが上下してかなり凝った演出でした。
特に富の市が二階から小判をちゃらんぢゃらんと落す件。時代劇でよく出てくる演出が生(なま)で見れて嬉しかった。
初代検校さんも根っからいい人でもなかったんですねえ。お金がイチバン。妻は毎日小判を磨いて、二人で顔にあててスリスリ。いい人たちだったら、嫌な気分になったかもしれませんが、なんか痛快(?)な気分でした。
なぜか次郎が現れるって、ご都合主義も嬉しい♪やっぱりこうでなくちゃ。
第二幕
第一場 二代目検校の居間
二代目検校となった富の市は贅沢三昧な毎日。
屋敷に浮世絵の一枚絵にもなった美女湯島の茶屋女おはんとその母が招かれていた。
おはんを妻にしたい検校。しかしそっけないおはん。
幸吉として検校に仕えている生首の次郎の女房おつまが、おはんを手に入れるための策を話す。
確かこの幕が開いた途端に幸四郎さんが三味線弾きながら唄ってはったような。
さすが、いいお声でした。もっと聴いていたかったです。
孝太郎さん、申し訳ないけど浮世絵にもなった美女には見えなかったなあ。
ただの愛想の悪い猫好きの大工の娘、みたいな感じ。
手元の猫のぬいぐるみ、孝太郎さんが動かしてたのか知らん。なかなか本物ちっくやったような気がする。
にゃおーんってどうやって声つけてはったんかなあ。人の声?
秀太郎さんはやり手婆みたいなというか、お金大好き♪そのためなら娘でも。という性悪な女性が上手いなあ。検校からもらった小判をすりすり。うまいわあ。
上手いといえば高麗蔵さん。夜鷹って雰囲気がでていて、ちょっと悪いわよな笑い方の女の人がよかったぁ。ほんと高麗蔵さんって上手いわぁ。
股旅姿から一点、大店の番頭みたいな橋之助さん。またまたかっこいいんだなあ。
幸四郎さんと「はっはっはっはっはっ…!」のわっる~い笑い声がたまらんかった。
第二場
元の検校の居間
半年後、おはんは検校の妻になっていた。
次に狙うのは江戸城の御金蔵。旗本岩瀬が御金蔵警護の組頭に就いたため狙えると鳥羽屋兄弟に打ち明ける。
岩瀬の屋敷へ出かけしなに、おはんに出入りの屋敷からの品物をしまう長持がほしい、指物師を知らないかと相談。するとおはんは房五郎をすすめる。
この場やったかなあ、おはんが風呂へ入ってきて、検校が「髪も洗ったのか。」みたいな台詞言ってはったのは。房五郎と逢引をしていて、ニオイをとってきたのか。みたいな台詞に聞こえました。
長持という時点で、いやあ、この中に二人入れますか!ってぞぞぞぞっときました。
第三場
岩瀬家の居間
組頭就任のお祝いを述べに丹治を伴って岩瀬家へ。
警護のときは肩が凝るだろうと、詰め所に行って治療をすると提案。
五のつく日に岩瀬は城内に行くと教えられる。
妻の浪江は家の金に手をつけて離縁させれられていたが、なんども屋敷に来られて困っている模様。
この日も浪江がやってきたが追い返せと岩瀬。
検校が上座で煙草をスパスパ。
岩瀬が入って来そうになるとあわてて下座へ。面白かった。
どこまでも間抜けな岩瀬の友右衛門さん、上手すぎ!!
この場でも「謡いを聴いていかないか。」「またの機会に。」おもしろい!
第四場
神田土手の場
岩瀬家から屋敷へ戻る途中の検校たち。
そこへ追ってきたのは落ちぶれた浪江。
そのときの恨みを晴らそうと懐剣を出すが、検校に返り討ちに。
自害と見せかけるために鳥羽屋兄弟に川へ投げ捨てさせる。
いやあ、やっぱり魁春さんよかったわあ。落ちぶれ感が最高。
殺されてしまったけれど、自分も検校に身体を許したわけだから殺されても、いやあ、かわいそうって思わなかったなあ。ああ、やっぱりなって、必殺仕事人感覚。
第五場
検校の居間
出来上がった長持を届けに来た房五郎。長持が出来上がっては逢えないと惜しむ二人。
そこへ検校が入ってくる。
おはんをはずさせ、房五郎に針療治と見せ掛け殺める。
戻ってきたおはんの首を絞め、おはんの猫も。
鳥羽屋兄弟に長持に二人と猫を入れさせ、始末するように命じるが、弟玉太郎が恐ろしいとその場から逃げ出してしまう。
何処かの旗本?大名から呼び出しがあるとの知らせ。向かうことにする検校たち。
ううううん、孝太郎さんと翫雀さん、できそこないの上方和事を見ているようでした。ごめんなさい。
孝太郎さん、「身体は許しても心はあんた。」みたいな台詞も全然そんな感じがしなかったです。
検校に首を絞められる件でも、なんか…うううううん。なんとかならなかったのかなあ。
検校さんが房五郎に「目が見えるからいいなあ。」みたいな台詞を言いながら肩もみ。「針を刺して。」なんて台詞のときは客席から笑いが。私も笑いました。言い方がたまらないんですよねえ。
「はい、これで一生肩はこりません。」幸四郎さん上手すぎ。
第六場
横山町の往来
八幡祭りでにぎわう横山町。
幸吉を供に、駕籠で向かう検校。
そこに捕り手が取り囲む。玉太郎が訴え、丹治も自白した。縄にかかる検校たち。見物人たちが石を投げ、罵声を浴びせる。引かれていく検校たち。
寺社奉行に左團治さん。かっこ良かったです。いつも悪いのに正義感満載。へんな感じ。
舞台が回って、引っ立てられる件が長め。
花道七三で見得を切った検校。かっこいい。
「人でなし!」の罵声に検校が、「人だとぉ?!お前はどうだ。目あきのくせに何もできず、そのままじじい、ばばあになってしまうんだ。」
人は少なからず悪い心を持っていて、度胸がなかったり、良心が勝っていたりしてできない、しないのがほとんど。確かにそんなもんかもと、台詞を聞いて感じました。
橋之助さんが花道に向かって「あばよっ!」幸四郎さんが「地獄で待ってるぜ。」
かっこいいったらありゃしない。さぶいぼ出ましたよ。
丁度、二人が私の目線にぎりぎり納まっていたので、もう最高でした。
■□■
わざわざ東京まで出てきて良かったです。想像以上に面白かったです。
ものすごく悪い検校なのになんだか憎めないというか、残酷さがないというか。不思議な感覚でした。すべての場で客席は真っ暗。非常誘導等も消されていました。
まあ、しかし、幸四郎さんの暑苦しくないさっぱりした台詞回しが快適で、橋之助さんの歌舞伎ちっくな芝居が程よくからんで絶妙。「演劇としての歌舞伎」堪能しました。あぁ、良かった(*^^*)
■□■
2.馬盗人(20:00~20:37)
ならず者悪太 翫 雀
ならず者すね三 巳之助
百姓六兵衛 橋之助
馬を買ってきた帰りに水を汲みに行った百姓六兵衛。馬を目当てに追ってきたならず者の悪太とすね三。
悪太は馬の振りをして残り、すね三は市へ馬を売りに行く。
戻った六兵衛。悪太は実は人間だったが天罰で馬にされた、しかし善人に買われたから元に戻れたという。
その言葉を信じた六兵衛は喜びの舞を舞い、金まで与えて悪太を見送る。
その金で酒を買い酔いながらすね三のところへ戻った悪太。二人とも酔ってその場で眠ってしまう。
そこに通りかかった六兵衛。互いに馬を取り合うが、馬は逃げてしまう。
大好きな長唄舞踊。おっ!杵屋東成さんがいらっしゃる。昨年咲くやこの花芸術祭で拝見して依頼初めてかも。知ってる方がいると嬉しいもんです。いいお声でした~。
鳴り物も面白くて、竹を叩くものや、なんか黒い板みたいな「ぽこぽこぽこぽこ…。」ってかわいい音がするもの、南国系?みたいな太鼓があったり、笛の方も2種類吹いてはりました。
先ほどまで悪だった橋之助さん。「~なんだねえ。」と、どこの言葉かわかりませんが、田舎言葉。
ちょびヒゲまで生やしていて、かわいいのなんのって(*^_^*)
踊りは少しの間でしたけど、やっぱり橋之助さんすごい。
「人間になって良かったね、嬉しいよ。」って雰囲気が出ていて、ほわほわほわ~んとした感じ。
ちょっと手を振られるだけで、一瞬に舞台が華やぐというか。
いいなあ、やっぱり橋之助さん。昼の部の男女道成寺も観とくべきやったかなあと、踊りが終わられた瞬間思ったのでした。
巳之助さんはコミカルなお芝居は上手いですね。踊りはちょっと舞踊というよりダンスって感じがしました。
イチバンの主役はお馬さんです。
悪太とすね三と一緒に女の舞を披露します。脚がなんともなまめかしく、かわいい。お馬さんの胴体かぶってほんとすごいとしか言いようがないです。
おしまいは七三でバタバタバタバタ~っと見得を切って、飛び六方で引っ込みでした。
客席は笑いと拍手でいっぱい。
ほんと楽しかったです。
今回はとちり席。よく見えるご機嫌な席で始まる前からテンション高かったです。
1.不知火検校 2幕14場(16:30~19:40)
按摩富の市後に二代目検校 幸四郎
奥方浪江 魁春
指物師房五郎 翫雀
生首の次郎後に手引の幸吉 橋之助
湯島おはん 孝太郎
丹治弟玉太郎 亀鶴
若旦那豊次郎 巳之助
娘おしづ 壱太郎
夜鷹宿おつま 高麗蔵
鳥羽屋丹治 彌十郎
岩瀬藤十郎 友右衛門
母おもと 秀太郎
寺社奉行石坂喜内 左團次
大好きな幸四郎さん演出で36年ぶりの上演とのこと。橋之助さんまでご出演。きや♪
場ごとに気になったことを書きつらねます。
第一幕
第一場 浜町河岸はずれ
ある雨の日の夜、魚屋の富五郎は雨宿りしているあんまが25両持って国許へ向かうと知り、あやまって殺めてしまう。
その時生まれた子供が目が見えない。
この因縁で富市が生まれたってこと?あんまりお父さん、悪い感じがしなかったなあ。
第二場 深川佐賀町富五郎住居
七年後、あんまの修行中の富市。家が貧しいのを母親に嘆く。父親に内緒にと小遣いをやる。
実は客先で金を盗んだり、流しのあんまで儲けたりすることから、師匠からこないよう言われる。
怒った父親は富市を謝りに師匠の元へむりやり連れて行く。
もう七つのころから悪の道へ。両親はそんなことないんだなあ。
第三場 浜町河岸
十年後、すっかり成人した富市は按摩富の市として働いていた。
すれ違った若い男女をだまし、1両儲ける。
しかも、親孝行するためと周りの人たちをだますしたたかさ。
巳之助さんと壱太郎さんの若者コンビ。
人のいい若旦那がぴったり、ちょっと面倒なことにかかわらないでよな町娘?の壱太郎さん。よかったなあ(*^_^*)
この場やったかなあ(あやふや)検校さん「仕込み杖でもついて、倍返しでもしてやろう。」とか言いはったんですよねえ。アドリブやったそうですが、この日は「半沢直樹」最終回の日やったから?
むちゃくちゃ笑いました。
第四場 神田佐久間町旗本岩瀬家の居間
旗本岩瀬が留守の間に屋敷を訪れた富の市。岩瀬の妻浪江は富の市の師匠検校から30両を借りようとしていた。それを断るために富の市は来たのだったが、代わりに貸すといい、さらに按摩するといいながら手篭めにしてしまう。
魁春さん、その容姿から今まで敬遠していましたが(すみません)意外と良かったです(ああ、ごめんなさい)。脳内変換できました(ほんとうにごめんなさい)。目が見えないから香りがいいとかなんとか思うのかなあ、とか思ったりして(まだ言うか!)。
第五場 同じ居間
翌日、一夜を明かした二人。そこに主人岩瀬が戻ってくる。
さて、預けた30両を返してくださいと富の市。話が違うと言いたげに浪江は返す。
事実を知らない岩瀬は謡いを聴いて帰れと。またの機会にと富の市。
友右衛門さん上品であほうな旗本、上手いわあ。
しらじらしい、富の市の幸四郎さんとの間が最高。
ええい、だまされた、うううううな魁春さんも良かった(脳内変換済)。
第六場 武州熊谷堤庚申塚
熊谷宿に近い街道。旅人が癪を起こし苦しんでいるところに通りかかった富の市。
旅人が200両を懐に持っていると知ると、針で治しましょうと殺めてしまう。
それを見ていた生首の次郎に半分の100両を渡すと、江戸の口入屋鳥羽屋を訪ねるようすすめ、二人は別れる。
懸命に按摩をしているようでも、殺めるんやろうなあ、ああ、やっぱり刺した。必殺シリーズの主人さんの仕事シーンみたいなワクワク感♪針を刺した後の富の市「はい、これで一生癪は起こりませんよ。」軽い感じで怖いというより、面白い。その感じかとても絶妙。
股旅姿の橋之助さん、かっこいい、オトコマエ!!
第七場
鳥羽屋の屋敷
三年後、鳥羽屋の丹治と玉太郎兄弟と組んで仕事をしている富の市。
次は師匠の家に押し入って金を奪おうという。
おっかない兄弟はついでに富の市もやってしまおうと決心。
弥十郎さんと亀鶴さんのコンビって初めてかも。なんかいい感じ♪
第八場
横山町検校の居間
初午の日の夜。初代検校と妻は寝酒を楽しんでいるところに富の市が帰ってくる。
先にやすむと富の市は別室へ。
検校夫婦が千両箱を開け、小判を眺めているところに鳥羽屋の兄弟が押し入って夫婦を殺めたあと、次に富の市をと思ったとき、生首の次郎とともに富の市が現れる。すべてわかっていた富の市は次郎を江戸に呼び寄せていた。奪った金を奪う悪人たち。
セットが二階建てで、検校夫婦は二階でした。それが上下してかなり凝った演出でした。
特に富の市が二階から小判をちゃらんぢゃらんと落す件。時代劇でよく出てくる演出が生(なま)で見れて嬉しかった。
初代検校さんも根っからいい人でもなかったんですねえ。お金がイチバン。妻は毎日小判を磨いて、二人で顔にあててスリスリ。いい人たちだったら、嫌な気分になったかもしれませんが、なんか痛快(?)な気分でした。
なぜか次郎が現れるって、ご都合主義も嬉しい♪やっぱりこうでなくちゃ。
第二幕
第一場 二代目検校の居間
二代目検校となった富の市は贅沢三昧な毎日。
屋敷に浮世絵の一枚絵にもなった美女湯島の茶屋女おはんとその母が招かれていた。
おはんを妻にしたい検校。しかしそっけないおはん。
幸吉として検校に仕えている生首の次郎の女房おつまが、おはんを手に入れるための策を話す。
確かこの幕が開いた途端に幸四郎さんが三味線弾きながら唄ってはったような。
さすが、いいお声でした。もっと聴いていたかったです。
孝太郎さん、申し訳ないけど浮世絵にもなった美女には見えなかったなあ。
ただの愛想の悪い猫好きの大工の娘、みたいな感じ。
手元の猫のぬいぐるみ、孝太郎さんが動かしてたのか知らん。なかなか本物ちっくやったような気がする。
にゃおーんってどうやって声つけてはったんかなあ。人の声?
秀太郎さんはやり手婆みたいなというか、お金大好き♪そのためなら娘でも。という性悪な女性が上手いなあ。検校からもらった小判をすりすり。うまいわあ。
上手いといえば高麗蔵さん。夜鷹って雰囲気がでていて、ちょっと悪いわよな笑い方の女の人がよかったぁ。ほんと高麗蔵さんって上手いわぁ。
股旅姿から一点、大店の番頭みたいな橋之助さん。またまたかっこいいんだなあ。
幸四郎さんと「はっはっはっはっはっ…!」のわっる~い笑い声がたまらんかった。
第二場
元の検校の居間
半年後、おはんは検校の妻になっていた。
次に狙うのは江戸城の御金蔵。旗本岩瀬が御金蔵警護の組頭に就いたため狙えると鳥羽屋兄弟に打ち明ける。
岩瀬の屋敷へ出かけしなに、おはんに出入りの屋敷からの品物をしまう長持がほしい、指物師を知らないかと相談。するとおはんは房五郎をすすめる。
この場やったかなあ、おはんが風呂へ入ってきて、検校が「髪も洗ったのか。」みたいな台詞言ってはったのは。房五郎と逢引をしていて、ニオイをとってきたのか。みたいな台詞に聞こえました。
長持という時点で、いやあ、この中に二人入れますか!ってぞぞぞぞっときました。
第三場
岩瀬家の居間
組頭就任のお祝いを述べに丹治を伴って岩瀬家へ。
警護のときは肩が凝るだろうと、詰め所に行って治療をすると提案。
五のつく日に岩瀬は城内に行くと教えられる。
妻の浪江は家の金に手をつけて離縁させれられていたが、なんども屋敷に来られて困っている模様。
この日も浪江がやってきたが追い返せと岩瀬。
検校が上座で煙草をスパスパ。
岩瀬が入って来そうになるとあわてて下座へ。面白かった。
どこまでも間抜けな岩瀬の友右衛門さん、上手すぎ!!
この場でも「謡いを聴いていかないか。」「またの機会に。」おもしろい!
第四場
神田土手の場
岩瀬家から屋敷へ戻る途中の検校たち。
そこへ追ってきたのは落ちぶれた浪江。
そのときの恨みを晴らそうと懐剣を出すが、検校に返り討ちに。
自害と見せかけるために鳥羽屋兄弟に川へ投げ捨てさせる。
いやあ、やっぱり魁春さんよかったわあ。落ちぶれ感が最高。
殺されてしまったけれど、自分も検校に身体を許したわけだから殺されても、いやあ、かわいそうって思わなかったなあ。ああ、やっぱりなって、必殺仕事人感覚。
第五場
検校の居間
出来上がった長持を届けに来た房五郎。長持が出来上がっては逢えないと惜しむ二人。
そこへ検校が入ってくる。
おはんをはずさせ、房五郎に針療治と見せ掛け殺める。
戻ってきたおはんの首を絞め、おはんの猫も。
鳥羽屋兄弟に長持に二人と猫を入れさせ、始末するように命じるが、弟玉太郎が恐ろしいとその場から逃げ出してしまう。
何処かの旗本?大名から呼び出しがあるとの知らせ。向かうことにする検校たち。
ううううん、孝太郎さんと翫雀さん、できそこないの上方和事を見ているようでした。ごめんなさい。
孝太郎さん、「身体は許しても心はあんた。」みたいな台詞も全然そんな感じがしなかったです。
検校に首を絞められる件でも、なんか…うううううん。なんとかならなかったのかなあ。
検校さんが房五郎に「目が見えるからいいなあ。」みたいな台詞を言いながら肩もみ。「針を刺して。」なんて台詞のときは客席から笑いが。私も笑いました。言い方がたまらないんですよねえ。
「はい、これで一生肩はこりません。」幸四郎さん上手すぎ。
第六場
横山町の往来
八幡祭りでにぎわう横山町。
幸吉を供に、駕籠で向かう検校。
そこに捕り手が取り囲む。玉太郎が訴え、丹治も自白した。縄にかかる検校たち。見物人たちが石を投げ、罵声を浴びせる。引かれていく検校たち。
寺社奉行に左團治さん。かっこ良かったです。いつも悪いのに正義感満載。へんな感じ。
舞台が回って、引っ立てられる件が長め。
花道七三で見得を切った検校。かっこいい。
「人でなし!」の罵声に検校が、「人だとぉ?!お前はどうだ。目あきのくせに何もできず、そのままじじい、ばばあになってしまうんだ。」
人は少なからず悪い心を持っていて、度胸がなかったり、良心が勝っていたりしてできない、しないのがほとんど。確かにそんなもんかもと、台詞を聞いて感じました。
橋之助さんが花道に向かって「あばよっ!」幸四郎さんが「地獄で待ってるぜ。」
かっこいいったらありゃしない。さぶいぼ出ましたよ。
丁度、二人が私の目線にぎりぎり納まっていたので、もう最高でした。
■□■
わざわざ東京まで出てきて良かったです。想像以上に面白かったです。
ものすごく悪い検校なのになんだか憎めないというか、残酷さがないというか。不思議な感覚でした。すべての場で客席は真っ暗。非常誘導等も消されていました。
まあ、しかし、幸四郎さんの暑苦しくないさっぱりした台詞回しが快適で、橋之助さんの歌舞伎ちっくな芝居が程よくからんで絶妙。「演劇としての歌舞伎」堪能しました。あぁ、良かった(*^^*)
■□■
2.馬盗人(20:00~20:37)
ならず者悪太 翫 雀
ならず者すね三 巳之助
百姓六兵衛 橋之助
馬を買ってきた帰りに水を汲みに行った百姓六兵衛。馬を目当てに追ってきたならず者の悪太とすね三。
悪太は馬の振りをして残り、すね三は市へ馬を売りに行く。
戻った六兵衛。悪太は実は人間だったが天罰で馬にされた、しかし善人に買われたから元に戻れたという。
その言葉を信じた六兵衛は喜びの舞を舞い、金まで与えて悪太を見送る。
その金で酒を買い酔いながらすね三のところへ戻った悪太。二人とも酔ってその場で眠ってしまう。
そこに通りかかった六兵衛。互いに馬を取り合うが、馬は逃げてしまう。
大好きな長唄舞踊。おっ!杵屋東成さんがいらっしゃる。昨年咲くやこの花芸術祭で拝見して依頼初めてかも。知ってる方がいると嬉しいもんです。いいお声でした~。
鳴り物も面白くて、竹を叩くものや、なんか黒い板みたいな「ぽこぽこぽこぽこ…。」ってかわいい音がするもの、南国系?みたいな太鼓があったり、笛の方も2種類吹いてはりました。
先ほどまで悪だった橋之助さん。「~なんだねえ。」と、どこの言葉かわかりませんが、田舎言葉。
ちょびヒゲまで生やしていて、かわいいのなんのって(*^_^*)
踊りは少しの間でしたけど、やっぱり橋之助さんすごい。
「人間になって良かったね、嬉しいよ。」って雰囲気が出ていて、ほわほわほわ~んとした感じ。
ちょっと手を振られるだけで、一瞬に舞台が華やぐというか。
いいなあ、やっぱり橋之助さん。昼の部の男女道成寺も観とくべきやったかなあと、踊りが終わられた瞬間思ったのでした。
巳之助さんはコミカルなお芝居は上手いですね。踊りはちょっと舞踊というよりダンスって感じがしました。
イチバンの主役はお馬さんです。
悪太とすね三と一緒に女の舞を披露します。脚がなんともなまめかしく、かわいい。お馬さんの胴体かぶってほんとすごいとしか言いようがないです。
おしまいは七三でバタバタバタバタ~っと見得を切って、飛び六方で引っ込みでした。
客席は笑いと拍手でいっぱい。
ほんと楽しかったです。