かげろふの ごとくはかなき 緒をとりて いかにて月を ぬかむとはする
*かげろふは「蜉蝣」ですね、とんぼではなくアリジゴクの成虫の方です。成虫になると命は短く、一日で死んでしまうことからはかないことのたとえに使われますが、この歌では蜉蝣の形も意識しています。まるで短い糸を何本か結んだような姿を、思い浮かべることでしょう。
そのような蜉蝣のようにはかなくて、短い糸のようなものをとって、どのようにして月を、玉のようにぬこうとするのか。
この時代、天使になりたくてかのじょの真似をした人はたくさんいますが、天使というのは大変なものだと言うことがわかっていない人がたくさんいます。わたしたちはあなたがたよりずっと長く生きて、それは大変なことをしてきたので、徳分の巨人になっているのです。
それぞれが山よりも大きい徳分を持っている。そのような天使の美貌を盗むことは、大変なことなのです。蜉蝣の糸で月をつらぬくようなものだ。わかっていない人が多すぎます。
ただきれいだから、あれが好きだから、あんなものになりたいから、という愚かな理由で天使から美貌を盗むと、その徳分を盗んだことになり、天使と同じことをせねばならなくなるのです。
あなたがたはまだ、あれほど美しい詩や小説を書くことはできないでしょう。それどころか、妻となってパートナーの男性に、はしためのように仕えることができますか。天使なら何でもないことでも、まだ至らない小さな女性にはできないことがたくさんある。
家事をするのさえおぼつかないような女性が、人類の救済事業をひとりで背負ってやりぬく天使と同じことができますか。
やらねばならないのですよ。それを。永遠の時をかけても、あなたがたはかのじょと同じことをせねばならないのです。
天使を馬鹿にするからそういうことになる。勉強もせずに何もしてこなかったからそうなる。今さら悔いてもしかたがない。あなたがたはやっていかねばなりません。
逃げても無駄です。自分のやったことは必ず自分についてくるからです。そんなことは無理だと言っても、通らないのです。やらねばならない。
本気にしないでいると、後が大変なことになりますよ。天使から盗んだ美貌は、急いで返した方がよろしい。
この項が発表される頃には、天使顔の女もだいぶ減っているといいのですが。