食ふたびに ありがたきもの 甘藷かな 夢詩香
*ここらへんには、サツマイモ畑がたくさんあります。全国でもかなり有名なブランドらしい。ですから、スーパーなどにもたくさんサツマイモが並んでいます。
甘藷はおいしいですね。ふかすのも焼くのもてんぷらに揚げるのもおいしい。あたたかくて甘くてホクホクした芋を食べると、幸せを感じます。
そのように、神が自然に与えてくれるものを、自然に感謝する心を表現することは、大事です。
この句を基本形にして、いろいろとパロディを作ってみてください。自分がありがたいと思っている物を、詠み込んでみるのです。名詞や動詞や形容詞の部分を入れ替えてみると、けっこうおもしろいものができますよ。
「乗るたびにありがたきもの車かな」とか、「見るたびにうれしきものは桜かな」とかね。つまらないと思わずに、やってみてください。こんな遊びをしているうちに、情感が太って来て、色んなことができるようになってきます。
わたしの弟子の一人は、「拭くたびにありがたきものトイペかな」なんてのを詠んで、周りのものにたたかれていましたが。そういうのもいいでしょう。
いろいろな人の句を詠んで思うことですが、なかなかうまく句が詠めないのは、最初から難しいことをやろうとしすぎるからだと思いますよ。まずはこういう基本形から、いろいろ遊んでみて、自分の土台を作ることから始めるほうが、上達の道を作ります。
作業をすることで、自分の情感を育てるのです。感じることが高くなれば、自然によい句が詠めるようになります。そして基礎を十分に作っておいて、そこから枝葉を広げていく。それが創造の基本というものです。
ごく簡単なところから始め、だんだんと高度になってくる。そしてどんどん成長してきて、やがてとても難しいこともできるようになってくる。
最初から完成しようとして、あまり難しいものを作ろうとすると、自分の小ささが際立って見えて、自信を無くしてしまい、やる気をなくして、結局はやめてしまって、何もならないということがよくあります。
まずはこんなところから、遊んでみてください。おもしろいことを、いろいろと自由に考えてみましょう。