やまゆりを 摘みて束ねて 坂下る 夢詩香
*やまゆりなんて、この辺には咲いてないし、その季節でもないので、白い萩の花で代用です。もう萩も終わりましたけどね。
県外で働いていた時、職場の人間関係でつらい思いをしたことがありました。お局様みたいな人がいて、その人に嫌われていたんです。
なんで嫌われていたかっていうとね、要するに、わたしの方が若いっていう理由だけです。人間て、ただそれくらいのことがつらくて、人にいやなことをすることがある。年は聞かなかったけど、その人はそのときたぶん30半ばくらいで、まだ結婚をしていませんでした。
いじめってほどでもなかったんですけど、ものの言い方がきつかったですね。一緒に仕事をするときも、態度が冷たかった。背が小さくてまるっこい人でした。眼鏡をかけていて、とても美人とは言えなかった。いろいろなコンプレックスがあったんだと思う。
だけどある日、その人が近くの山からやまゆりを摘んできてくれて、それを花瓶にきれいに生けてくれたのです。
それはとても上手な生け方で、花瓶の大きさと、花の傾き方が絶妙にきれいで、とてもよかった。職場にやまゆりが咲いて、いっぺんに明るくなった。
習ったことがあるのかな。わたしも花を花瓶に差すことくらいはできるけど、あんなに上手にはできない。
それを見て、どんな人にも、絶対にいいところがあるんだと思いました。
そんなにいいことができるんだから、もっと自分に自信を持てばいいのに。そうしたら、人にもやさしくできて、若い子に嫌われなくても済むのに。
そんなことを思ったことがありました。