転ぶ子を わらふ君から 目をそらす 夢詩香
*夫と子供には苦労してるけど、わたしは嫁姑の問題では、あまり苦労はしませんでした。
お義母さんが、かなり良い人だったからです。
正直に言うと、今の夫と本気で結婚をする気になったのは、彼のお母さんに会ってから。とても優しそうで、なんだか懐かしいような気もして。夫が明るい家庭でまっすぐに育ったことが、ありありとわかる。
自分のほんとの親より、好きになれそうな気がしたのです。
思った通り、お義母さんはとてもいい人でした。ほとんど喧嘩らしい喧嘩なんてしたことがなかった。一度、夕食に出したキノコ料理に文句をつけられたことがあるくらい。ほかにはほとんど何も、嫌なことはありませんでした。
多分、いろいろと思うことはあったんでしょうけどね、わたしの前では言わなかっただけで。でも、家庭を乱すよりは自分が我慢したほうがいいってことができる人だったから。それでわたしも、楽な気分になれたんだと思う。
ただ、一つだけあったとすれば、お義母さんがいつも、テレビで犯罪者のニュースなんかを見ると、あからさまに責めることでした。
なんであんなことをするんだろう、嫌な人ねえ、なんてことを言う。わたしは、別に反論はしないけど、相槌も打たない。犯罪者に味方するわけではないけど、わたしは、失敗をした人を馬鹿にしたり責めたりする気にもなれないのです。
本人はもう捕まってつらいことになっているのだから、何も関係ない他人は何も言わないほうがいいというのが、わたしの考え方で。
自分も転んで痛い思いをすることもあるだろうから、他人が転んで笑うことなんてできない。
まあ、そこらへんで心の行き違いはあったんだけど、お互いに、お互いの欠点はつかないことにしていたから、何とかなってたのかもしれないですね。