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説明

🇫🇷水声社

2021-01-16 04:39:53 | 翻訳
〈翻訳家は裏切り者〉ではない。決して裏切らないために翻訳するのである。
〈世界文学〉を支える翻訳とはいかにして行われるのか――古典、詩歌、小説、思想、映画、そして創作にいたるまで、ある言語が別の言語と通いあう道なき道を模索し、苦闘の末に言葉を見出した翻訳家たちの冒険の記録!

【目次】
序 翻訳という幸福の瞬間  澤田直

Ⅰ 翻訳史から見える展望
『フランス語翻訳史』を書くということ――企画、方法、展望をめぐって  ベルナール・バヌン

Ⅱ 作家と翻訳
文法のすれちがいと語りの声  多和田葉子
無名の手に身を委ねること  堀江敏幸

Ⅲ 初訳、再訳、新訳(古典、娯楽小説)
新訳の必要性――ラブレーの場合  宮下志朗
西鶴の文体を翻訳する  ダニエル・ストリューヴ
欄外文学を翻訳する――正岡子規の『病牀六尺』  エマニュエル・ロズラン
二流文学、二流翻訳、二流読者?――娯楽小説の場合  アンヌ・バヤール゠坂井
『オペラ座の怪人』の面白さ――エンタテインメント小説の翻訳  平岡敦
プルースト邦訳の可能性  吉川一義

インタールード
出産/Naissance d’ours blancs/白熊の  多和田葉子/坂井セシル

Ⅳ 翻訳という経験と試練(思想、映画、詩)
開く、閉じる――文学と哲学を翻訳する際の差異について  澤田直
映像のような言葉――可視化された字幕のために  マチュー・カペル
翻訳における他性の痕跡としての発話行為  ジャック・レヴィ
大岡信と谷川俊太郎の詩にみる言葉遊び――翻訳家の挑戦  ドミニック・パルメ
韻文口語訳の音楽――ランボー「陶酔の船」Le Bateau ivreを例に  中地義和

Ⅴ 世界文学と翻訳、残るものとその可能性
「世界文学」と「日本近代文学」  水村美苗
翻訳という名の希望  野崎歓

あとがき  坂井セシル


【編者/執筆者/訳者について】
澤田直(さわだなお)
立教大学教授、公益財団法人日仏会館理事。1959年生まれ。専門はフランス語圏文学・思想。パリ第1大学博士課程修了(哲学博士)。主な著書に『〈呼びかけ〉の経験』(人文書院)、『ジャン゠リュック・ナンシー』(白水社)、編著に『異貌のパリ 1919-1939――シュルレアリスム、黒人芸術、大衆文化』(水声社)、訳書に、サルトル『言葉』(人文書院)、『自由への道』(岩波文庫、全六巻、共訳)、フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断章』(平凡社ライブラリー)、フィリップ・フォレスト『さりながら』(白水社、日仏翻訳文学賞)など多数。
坂井セシル(Cécile SAKAI)
パリ・ディドロ大学教授、日仏会館・フランス国立日本研究所所長。1957年生まれ。専門は日本近現代文学。CRCAO(東アジア文化研究所)研究員。パリ第7大学博士課程修了(東洋学博士)。主な著書に Histoire de la littérature populaire japonaise (1900-1980), L’Harmattan (日本語版『日本の大衆文学(1900-1980)』朝比奈弘治訳、平凡社)、Kawabata le clair-obscur – Essai sur une écriture de l’ambiguïté, PUF, coll. « Écriture »。日本近代現代文学のフランス語への翻訳に、谷崎潤一郎、川端康成、河野多恵子など二十点以上ある。谷崎潤一郎の選集(共訳)及び円地文子『女坂』(共訳)の仏訳により日仏翻訳文学賞を受賞。

ベルナール・バヌン(Bernard BANOUN)
パリ・ソルボンヌ大学教授。1961年生まれ。専門はドイツ語圏現代文学。異文化研究、ジャンル研究、翻訳史、移動文化史をフィールドとする。ヨーゼフ・ヴィンクラー、ヴェルナー・コフラーなどドイツ・オーストリアの作家の他、多和田葉子のドイツ語作品、最近では『雪の練習生』のドイツ語版をフランス語に翻訳。Histoire des traductions en langue française des débuts de l’imprimerie jusqu’au xxe siècle, tome IV, xxe siècle, sous la direction de Bernard Banoun, Isabelle Poulin et Yves Chevrel, Verdier(『フランス語翻訳史』第四巻「二十世紀」)の共編者。
多和田葉子(たわだようこ)
作家。1960年生まれ。チューリッヒ大学大学院博士課程修了、博士(ドイツ文学)。ドイツ語と日本語の二カ国語で小説や詩、批評を発表。1992年に『犬婿入り』(講談社)で芥川賞を受賞。ドイツでも数々の賞を受賞し、2016年には全作品に対してクライスト賞が与えられた。『容疑者の夜行列車』(青土社、谷崎潤一郎賞)、『雲をつかむ話』(読売文学賞)、『献灯使』(全米図書賞翻訳部門)、『地球にちりばめられて』(いずれも講談社)など多数の作品があり、自ら日本語に訳している作品もある。『雪の練習生』は自らドイツ語に翻訳した。
堀江敏幸(ほりえとしゆき)
作家、早稲田大学教授。1964年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。『おぱらばん』(青土社、三島由紀夫賞)、『熊の敷石』(講談社、芥川賞)、『雪沼とその周辺』(新潮社)はフランス語に翻訳されている。主な著書に『河岸忘日抄』(読売文学賞)、『その姿の消し方』(野間文芸賞、いずれも新潮社)、『坂を見あげて』(中央公論新社)、『曇天記』(都市出版)がある。訳書にジャック・レダ『パリの廃墟』(みすず書房)、パトリック・モディアノ『八月の日曜日』(水声社)、ユルスナール『なにが? 永遠が』(白水社)など多数。
宮下志朗(みやしたしろう)
放送大学客員教授、東京大学名誉教授。1947年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。専攻はフランス・ルネサンス文学だが、近現代フランスの作家の翻訳も手がける。主な著書に『本の都市リヨン』(晶文社、大佛次郎賞)、『ラブレー周遊記』(東大出版会)、主な翻訳にラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』全5巻(ちくま文庫、読売文学賞、日仏翻訳文学賞)、モンテーニュ『エセー』全7巻(白水社)の他、バルザック、ゾラ、ロジェ・グルニエなど多数。
ダニエル・ストリューヴ(Daniel STRUVE)
パリ・ディドロ大学教授。1959年生まれ。パリ第7大学博士課程修了(東洋学博士)。CRCAO(東アジア文化研究所)研究員。専門は日本近世文学。主な論文に「垣間見――文学の常套とその変奏」(『源氏物語の透明さと不透明さ』、青簡舎)、「『西鶴大矢数』と西鶴文学における移動と変換」(『ことばの魔術師西鶴――矢数俳諧再考』、ひつじ書房)。主なフランス語への翻訳に井原西鶴の『西鶴置土産』『好色盛衰記』、井上靖『孔子』、堀辰雄『風立ちぬ』(ピエール゠フランソワ・カイエ翻訳賞)がある。
エマニュエル・ロズラン(Emmanuel LOZERAND)
フランス国立東洋言語文化大学教授。1960年生まれ。フランス国立東洋言語文化大学博士課程修了、博士(東洋学)。専門は日本近代文学、とりわけ森鴎外、夏目漱石、正岡子規。著書に『名のわづらい』(日仏会館)、 Littérature et génie national — Naissance de l’histoire littéraire dans le Japon de la fin du XIXe siècle, Les Belles-Lettres(『文学と国柄』、渋沢・クローデル賞受賞)など。フランス語への翻訳に森鴎外、武田泰淳などの小説や吉見俊哉の論考などがある。正岡子規『病牀六尺』の翻訳で日仏翻訳文学賞を受賞。
アンヌ・バヤール゠坂井(Anne BAYARD-SAKAI)
フランス国立東洋言語文化大学教授。1959年生まれ。パリ第7大学国家博士。専門は日本近現代文学。ガリマール社刊クワルト叢書『谷崎潤一郎』の編者。フランス語への翻訳に谷崎潤一郎の他、川端康成、大岡昇平、円地文子、大江健三郎、堀江敏幸など多数。谷崎潤一郎の選集(共訳)及び円地文子『女坂』(共訳)の仏訳により日仏翻訳文学賞、石田衣良『池袋ウェストゲートパーク』の仏訳により野間文芸翻訳賞を受賞。
平岡敦(ひらおかあつし)
中央大学非常勤講師、翻訳家。1955年生まれ。中央大学大学院修士課程修了。純文学から推理小説、SF、児童文学まで幅広い分野で翻訳活動を展開。これまでに八十冊を越える訳書を出している。主な翻訳にモーリス・ルブランのルパン・シリーズ、ダニエル・ペナック、イレーヌ・ネミロフスキー、ピエール・ルメートル『天国でまた会おう』(早川書房、日本翻訳家協会翻訳特別賞受賞)など。『オペラ座の怪人』(光文社古典新訳文庫)で日仏翻訳文学賞を受賞。
吉川一義(よしかわかずよし)
京都大学名誉教授。1948年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。ソルボンヌ大学博士。フランス文学専攻。日本プルースト研究会代表。共編著にMARCEL PROUST, Cahiers 1 à 75 de la Bibliothèque nationale de France, Brepols(『マルセル・プルースト――フランス国立図書館蔵カイエ1‐75』、2008年より刊行中)、著書に『プルーストと絵画』(岩波書店)、Proust et l’art pictural, Honoré Champion(『プルーストと絵画芸術』、カブール゠バルベック・プルースト文学サークル賞、学士院賞恩賜賞)、訳書にプルースト『失われた時を求めて』(岩波文庫、全14巻、既刊13巻)がある。
マチュー・カペル(Mathieu CAPEL)
日仏会館・フランス国立日本研究所研究員、グルノーブル・アルプス大学准教授。1975年生まれ。パリ第3大学大学院博士課程修了(映画・オーディオヴィジュアル)。専門は現代日本映画史。著書にÉvasion du Japon – Cinéma japonais des années 1960, Éd. Les Prairies ordinaires(『日本脱出――一九六〇年代の日本映画』)。映画論を中心に翻訳者としても活躍し、三十本以上の映画と十本の演劇の字幕に携わる。フランス語への翻訳に吉田喜重『メヒコ 喜ばしき隠喩』(日仏翻訳文学賞)、平田オリザ『三人姉妹 アンドロイド版』、小林多喜二『不在地主』がある。
ジャック・レヴィ(Jacques LÉVY)
明治学院大学教授。1953年生まれ。パリ第7大学DEA修了。専門はフランス文学、日本文学。現代日本文学のフランス語への翻訳に、中上健次の『賛歌』(ファヤール)、『岬』(ピキエ)、『奇蹟』(ピキエ、野間文芸翻訳賞)、阿部和重の『インディヴィジュアル・プロジェクション』(アクト・シュッド、日仏翻訳文学賞)、『シンセミア』(ピキエ)、『ニッポニア・ニッポン』(ピキエ)などがある。
ドミニック・パルメ(Dominique PALMÉ)
翻訳家。1949年生まれ。パリ第3大学比較文学修士課程及びフランス国立東洋言語文化大学修士課程修了。日本の近代現代文学を中心に翻訳活動を営む。井上靖『蒼き狼』、宇野千代『おはん』『色ざんげ』、吉本ばなな『キッチン』(いずれもキョウコ・サトウとの共訳)、大江健三郎『ヒロシマノート』、三島由紀夫『仮面の告白』『音楽』、池澤夏樹『帰ってきた男』、大岡信『日本の詩歌――その骨組みと素肌』、谷川俊太郎『世間知ラズ』の他、二十冊以上を翻訳。中村真一郎『夏』で日仏翻訳文学賞を受賞。
中地義和(なかじよしかず)
東京大学名誉教授。1952年生まれ。パリ第3大学博士。専門はランボーとフランス近代詩。著書に、Combat spirituel ou immense dérision ? Essai d’analyse textuelle d’Une saison en enfer, José Corti(渋沢・クローデル賞特別賞)、『ランボー 精霊と道化のあいだ』(青土社)、『ランボー 自画像の詩学』(岩波書店)、訳書に『ランボー全集』(共編訳、青土社)の他、ロラン・バルト、アントワーヌ・コンパニョン、ステンメッツ、とくにル・クレジオの作品の翻訳を手がける。
水村美苗(みずむらみなえ)
小説家、批評家。1951年生まれ。父の仕事の関係で12歳で渡米。イェール大学卒業(仏文専攻)・同大学院博士課程修了。プリンストン大学等で日本近代文学を教える。著書に『續明暗』(筑摩書房、芸術選奨新人賞)、『私小説 from left to right』(野間文芸新人賞)、『本格小説』(読売文学賞、いずれも新潮社)、『日本語が亡びるとき――英語の世紀の中で』(筑摩書房、小林秀雄賞)、『母の遺産――新聞小説』(中央公論新社、大佛次郎賞)などがある。フランス語では評論および『本格小説』が刊行されており、英訳や他国語訳も多数ある。
野崎歓(のざきかん)
放送大学教授、東京大学名誉教授。1959年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。著書に『ジャン・ルノワール――越境する映画』(サントリー学芸賞)、『赤ちゃん教育』(講談社エッセイ賞、いずれも青土社)、『異邦の香り――ネルヴァル「東方紀行」論』(講談社、読売文学賞)、『夢の共有――文学と翻訳と映画のはざまで』(岩波書店)、『水の匂いがするようだ――井伏鱒二のほうへ』(集英社)。スタンダール、バルザック、ネルヴァル、トゥーサン、ウエルベックなど約五十冊の訳書がある。

中田麻理(なかたまり)
立教大学大学院博士課程在籍。1988年生まれ。立教大学大学院修士課程修了。専攻はフランス文学、ジェンダー研究。主な論文に「ジャン・ジュネにおける黒人像の起源と展開をめぐって――『花のノートルダム』を中心に」(『フランス語フランス文学研究』第112・113号、2018)がある。
須藤瑠衣(すどうるい)
パリ・ディドロ大学大学院修士課程在籍。1990年生まれ。立教大学大学院修士課程修了。専攻、フランスにおける日本文学の受容と翻訳。
小黒昌文(おぐろまさふみ)
駒澤大学准教授。1974年生まれ。京都大学大学院博士課程修了(文学博士)。専門は20世紀フランス文学。著書に『プルースト――芸術と土地』(名古屋大学出版会)、共訳書にフィリップ・フォレスト『荒木経惟 つひのはてに』『夢、ゆきかひて』(いずれも白水社)、『シュレーディンガーの猫を追って』(河出書房新社)がある。
福島勲(ふくしまいさお)
早稲田大学准教授。1970年生まれ。東京大学大学院博士課程修了、博士(文学)。専門はフランス文学・思想、文化資源学。著書に『バタイユと文学空間』(水声社)、共編著に『フランス文化読本』(丸善出版)、訳書に『ディアローグ デュラス/ゴダール全対話』(読書人)、『ミヒャエル・ハネケの映画術』(水声社)などがある。
黒木秀房(くろきひでふさ)
立教大学兼任講師。1984年生まれ。立教大学大学院博士課程修了、博士(文学)。専攻、哲学・フランス思想。主な論文に「ドゥルーズと「フィクション」の問題――ドラマ化を中心に」(『フランス語フランス文学研究』第108号、2016)がある。
畠山達(はたけやまとおる)
明治学院大学准教授。1975年生まれ。パリ第4大学博士課程修了(文学博士)。専攻、ボードレールの詩学、フランス教育史。著書にLa Formation scolaire de Baudelaire, Classiques Garnier、共訳書にフランソワ・キュセ『フレンチ・セオリー――アメリカにおけるフランス現代思想』(NTT出版)がある。