私が読んだのは、小学館文庫 2006年9月 のもの
私にとって、新しい作家さんを又読むことが出来ました。流石に満天さんが選んで送ってくれたマンガですわ、表紙絵のかわいらしい少女の絵に騙される所でした。
この方、まんだらけ で表紙絵だけ見てるとちょっと内田 善美氏風の綺麗なカラーイラストで、どんなマンガを描く人か興味有りました。読んで見ると、あーっこの絵はちらちら見たことあるけど、雑誌の立ち読みとかで連載の一部を見たくらいだなぁと思い当たりました。
表題作
「記憶の技法」 初出 月刊fiowers 2002年6月~10月号 はミステリーというか、心の旅路というか、アイデンティテイー探しというようなことだと思うのですが、怖い。絵柄は全然怖くなくて可愛いのに恐い。最近の少女マンガってこんなにリアルなのか ?
文化 (マンガ) は世相を映す物だから、今の世の中が恐いのか ???
自分の出生と過去の記憶に疑問を抱いた高校生 華蓮(かれん) は封印された記憶を取り戻す為、同級生の 穂刈 怜(さとい) と福岡へ旅立つ。この怜君が大人っぽくて、世事に長けてて、バーテンのバイトなんかしててこの子の家庭もいろいろありそうだ。
調べるうちに分かってくる事は過去の事件。覚えてなくてよかったと言えるくらい悲惨な 華蓮 の本当の家族のこと。いや、5歳だった 華蓮 はあまりのことに自分で記憶を封印してしまったのだろうか。
「お母さん・・・? もう ―思い出してもいいんだ― 」
ラスト近くはっきりと思い出す事実はひどい思い出だったけれど、全てが分かった事で 華蓮 は納得でき、 怜 の寂しさにも思い当たる余裕が出来て、元の生活に戻っていく事が出来る。前とはちょっと違う生活だけれど。
この文庫380Pの半分近くを占める中篇。後は短編6本が入っていて、短い物は8Pのものも。
2つ目、
「霜柱の森」 初出 月刊fiowers 2003年3月号 は、前の 「記憶の技法」 に出てきた 穂刈 怜(さとい) 君の子供の頃のお話。家庭環境や母との関係が明らかに。宗教まがいの料理や縫い物の教室に没頭する母親って結構あちこちにいそうでこれ又、恐~い。
「アンナ O」 初出 月刊fiowers 2003年4月号 は夢の不条理、
「女子高校生殺人日記」 初出 月刊fiowers 2003年5月号 は現実の不条理と言うところか ???
「粉ミルク」 初出 月刊fiowers 2003年6月号 は 怜 の兄 円(まどか) の話しだと思うんだけど、小さな天使が出てきて、可愛い姿で言う事悪魔。精神を病んでいく 円 の心象風景か ???
「透明人間の失踪」 初出 月刊fiowers 2003年7月号
約束した時間に現れない恋人を下宿に訪ねて行った女の子。(最後まで名前が出てこない ! ) 調べていくうちに次々と彼のウソが分かってきて名前だけでも幾つも出てくるわ、お金を渡してそれっきりの女もいるわ、もうめちゃめちゃ。探しつかれて家に戻ると彼がいる。
「あなた・・・一体誰 ? 」
そりゃ言うよね。これも恐いわー。彼女は最後に痛烈なしっぺ返しをするんだけど、やっぱり女の方が恐い生き物かいな。
「恋愛家族」 初出 「たとえば恋愛コミックはこう読む」 同文書院 2000年刊 表紙を入れて8Pの短編ながら、この人のエッセンスたっぷりで笑って恐かった。6人家族の秘密がこの短いページの中で次々と明らかにされて・・・。あー可笑しい、みんな自分の悩みに一生懸命だよね、家族だろうが人の悩みなんか知ったこっちゃない。
家族なんて、人生なんて一生悩みを抱えていくこんなものか。
絵柄に騙されましたー
面白いじゃないのこの人。何度も読み返したくなる作品ばかりでした。満天さんありがとう