猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

萩尾 望都 「訪問者」

2007年07月18日 19時41分21秒 | マンガ家名 は行
         初出 プチフラワー 1980年 春の号


 私が読んだのは小学館文庫 1995年9月1日初版 2000年7月1日 第13刷 のもの


 名作 「トーマの心臓」の中の読者一番の人気キャラクターである オスカー・ライザー の子供の時の話がつづられています。

 6月12日の記事はこちら → 「トーマの心臓」 

 「トーマの心臓」 の中で彼の母親は父親に殺されたらしい事、その後父親と1年くらい各地を放浪した事、実の父親である ルドルフ・ミューラー 校長のいるシュロッターベッツ学院に半ば置き去りのように入学させられた事、などが語られていますが、その詳細が明らかにされてきます。ちょっと刑事などが絡んでミステリーにもなっている。

 直接 「トーマ~」 とは関係のないストーリーですが、オスカーが 「トーマ~」 の中であのような冷たいとも取れる落ち着いた大人の態度が取れるのが、1年留年しただけでなく皆より経験が豊富だから、という事が分かります。こんな1年を過ごせばどんな子供でも大人になってしまうよね・・・・。

 ラスト近く、ミュラーと初めて会うオスカー。オスカーを始めて見るミュラー。二人の何も言わない、けれど二人とも分かってしまった、描写が胸にズシンと…来ます。読者は先に 「トーマ~」 を読んでいるからこの重さが分かるのですね。

 それから私、最後になってこの題名の意味が分かりました。― 訪問者 ―は雪の上を歩いてくる神様のようでいて、それぞれの心の中にあるものだったのね ?


 同収録の 「城」 (初出 プチフラワー 1983年9月号) という作品は初めて見ましたが、表紙のイラストが 岡田 史子氏 を思い出させるもので、そう言えば、COMを通じて萩尾氏は彼女の影響も受けているのかな~と考えました。

 他に問題作で作品としても暗い 「エッグ・スタンド」 (初出プチフラワー 1984年3月号) 女子高校生の恋愛と心と体のアンバランスを描いた 「天使の擬態」 (初出 プチフラワー 1984年11月号) を収録。 
 「城」 と 「天使の擬態」 では、子供の自我の確立を、「エッグ・スタンド」 では 死 を、「訪問者」 ではその両方をテーマにしているように見えます。この頃 (1970年代後半~1980年半ば) は 「恐るべき子供たち」 (1979年)などもそうですが、萩尾氏はこのテーマを繰り返し描いているように見えます。そしてそれがその後の 「残酷な神が支配する」 などに繋がっているのでしょうか。
コメント (5)
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