【準々決勝 東洋大 5-6 創価大】
夢の4季連続日本一が儚く散った。「(東都)リーグの意地を懸けて、というのもあったんですけど。相手の執念が勝りましたね」と創価大(東京新大学)を称えた指揮官は、「鹿沼(圭祐・3年=桐生一高)、乾(真大・3年=東洋大姫路高)、それにキャッチャーの佐藤(貴穂・3年=春日部共栄高)も最後まで出た。負けて得た物といえば、そういう経験です」と、継続中のリーグ連覇に向けて収穫を口にした。しかし、それは努めてプラス思考に転じようとしただけのようだ。短い公式取材時間のなかで、何度も「悔しい」という言葉が口をついた。
敗因は、自慢の投手陣が崩れたことだ。先発の乾が2回もたずにKO。試合前、「暑いのは苦手なんですよね」と顔をしかめていた不安が的中してしまった。前日11日の九州共立大(福岡六大学)戦では、絶対的な信頼を寄せ先発に起用した鹿沼がピリッとせず、この日ために温存するはずだった乾のリリーフを仰いだ。狂った歯車を修正するには、時間が足りなすぎた。
それでも打線の奮起でなんとか創価大に食らいつく。そこには、“戦国”東都リーグを勝ち上がってきたチームの強さがあった。鋭いスイングで好投手・大塚豊(4年=創価高)から5点を奪った。
しかし、同点で迎えた8回が分岐点だった。1死二塁の場面でマウンドに向かった高橋監督は、「鹿沼は限界だ」と思っていた。それでも交代はしなかった。「あそこから藤岡(貴裕・2年、桐生一高)でもよかった。でも、鹿沼が『大丈夫』と言うから続投させた」と話す。
「これまで鹿沼に頼って勝ってきた。それなら、ここは賭けてみようと。打たれたのは責めることはでません。監督の責任です」
高橋監督は、1回戦後に言っていた。
「(鹿沼には)やっぱり疲れがある。春のキャンプで腰を痛めて、2週間くらい出遅れてるからね。そのつけが今出ている」
不調に気づいていても、最後までエースの負けん気を信じた。人情家の高橋監督らしいさい配だった。打たれた鹿沼は、悔しさを押し殺しながら「大塚さんは決め球が豊富だった。自分ももっと球種を増やしたい」と相手先発を称えた。そして、「(負けたことで)秋はまたチャレンジャーとして臨むことができる」と一からの出直しを誓った。
「ごめんね、弱くて」
今季も取材に応じてくれたお礼を言った筆者に、高橋監督は申し訳なさそうに謝った。まだ30にもならない一介の記者に、還暦を過ぎた大学野球界きっての名物監督がこともなげにこんなセリフを言う。だから、このチームは応援したくなる。そして、勝ち続けるという夢は、なんと遼遠なものなのかと、思い知らされた。
中立が前提の取材者がこんなことを言ってはいけないのかもしれない。けれど、敗戦の苦味は「ああ、おれはこの監督に魅せられているのだな」と、筆者に教えてくれた。
夢の4季連続日本一が儚く散った。「(東都)リーグの意地を懸けて、というのもあったんですけど。相手の執念が勝りましたね」と創価大(東京新大学)を称えた指揮官は、「鹿沼(圭祐・3年=桐生一高)、乾(真大・3年=東洋大姫路高)、それにキャッチャーの佐藤(貴穂・3年=春日部共栄高)も最後まで出た。負けて得た物といえば、そういう経験です」と、継続中のリーグ連覇に向けて収穫を口にした。しかし、それは努めてプラス思考に転じようとしただけのようだ。短い公式取材時間のなかで、何度も「悔しい」という言葉が口をついた。
敗因は、自慢の投手陣が崩れたことだ。先発の乾が2回もたずにKO。試合前、「暑いのは苦手なんですよね」と顔をしかめていた不安が的中してしまった。前日11日の九州共立大(福岡六大学)戦では、絶対的な信頼を寄せ先発に起用した鹿沼がピリッとせず、この日ために温存するはずだった乾のリリーフを仰いだ。狂った歯車を修正するには、時間が足りなすぎた。
それでも打線の奮起でなんとか創価大に食らいつく。そこには、“戦国”東都リーグを勝ち上がってきたチームの強さがあった。鋭いスイングで好投手・大塚豊(4年=創価高)から5点を奪った。
しかし、同点で迎えた8回が分岐点だった。1死二塁の場面でマウンドに向かった高橋監督は、「鹿沼は限界だ」と思っていた。それでも交代はしなかった。「あそこから藤岡(貴裕・2年、桐生一高)でもよかった。でも、鹿沼が『大丈夫』と言うから続投させた」と話す。
「これまで鹿沼に頼って勝ってきた。それなら、ここは賭けてみようと。打たれたのは責めることはでません。監督の責任です」
高橋監督は、1回戦後に言っていた。
「(鹿沼には)やっぱり疲れがある。春のキャンプで腰を痛めて、2週間くらい出遅れてるからね。そのつけが今出ている」
不調に気づいていても、最後までエースの負けん気を信じた。人情家の高橋監督らしいさい配だった。打たれた鹿沼は、悔しさを押し殺しながら「大塚さんは決め球が豊富だった。自分ももっと球種を増やしたい」と相手先発を称えた。そして、「(負けたことで)秋はまたチャレンジャーとして臨むことができる」と一からの出直しを誓った。
「ごめんね、弱くて」
今季も取材に応じてくれたお礼を言った筆者に、高橋監督は申し訳なさそうに謝った。まだ30にもならない一介の記者に、還暦を過ぎた大学野球界きっての名物監督がこともなげにこんなセリフを言う。だから、このチームは応援したくなる。そして、勝ち続けるという夢は、なんと遼遠なものなのかと、思い知らされた。
中立が前提の取材者がこんなことを言ってはいけないのかもしれない。けれど、敗戦の苦味は「ああ、おれはこの監督に魅せられているのだな」と、筆者に教えてくれた。