バナナ話 「２」

　先日お袋を連れて、てんぷらを食いに行ったときの話。
てんぷらの旨い店って、結構近くでは少ないんや。
あっちゃこっちゃで食うけど、肥えたわしのお口に合う「てんぷら」が中々ない。

　まだ愚息共が箸も使えない頃から行く、一軒のてんぷら屋がある。
『勝太郎』っちゅう名の店で、そこのてんぷらならいくらでも食える。
もう十五年～二十年くらいになるんやろか、ちょこちょこ世話になる店がある。

　先日お袋を連れてって、たわいも無い話をしながら、わいわいがやがやと揚げたての旬の食材に、頬を鳴らしながら旨い旨いとほおばる。
車えびから始まり、山芋・子鮎・ヒレ・貝柱・小たまねぎ・南京・キス・イカ…と、一口サイズの一品が次から次に揚がってくる。

　お袋はもう８０歳一歩手前の高齢にもかかわらず、よく食う。
ほとんどわしと変わらないほど食う。
餅が好きで、料理長に「餅！」。
芋が好きで、料理長に「おいもさん！」。と注文してる

　ぼちぼちお腹も膨れてきたし、最後になんかスゥッっとしたもん・・・・
ちゅうて、冷やしバナナのてんぷらを頼んだ。
バナナを冷凍してある、それをてんぷらにするんやが～これが晩餐の最後の大笑いになった

　カウンターの上にある品書きには、色んな食材と単価が書いてある。
一品１００円～１０００円くらいまで、様々な食材がある。
大方一個当りの単価を書いてあるので、そこでも勘違いがあったようなんや。

　料理長　「はいっ！お母さん、冷やしバナナ揚がりました！」　と、お袋の取り皿に二切れのバナナを置いた。
　お　袋　「やぁ～おいしそうやわぁ～」　と、一切れをバクッ！

　そこでお袋が、ふと我に帰り…小声でわしに「ちょっとあんた、これ一個２５０円って書いてるけど、間違いとちゃうか？高すぎるやろ」とほざきはった
お袋は、スーパーでバナナを買うと、１００円で３本くらいある！と豪語する。

　二つ並べてくれた、冷やしバナナのてんぷらも一切れ食ったら、残りの一切れを「これあんたにやるわ、もったいない…」と、得意のもったいない病が、ここで出た
料理長に、聞こえた
　おっさん慌てて「おかあさん、これ二つの料金ですし…このバナナ、皮剥いて、掃除して、ラップして、冷凍して…手間掛かってるんですわ」と、訳のわからん言い訳してたで

　お袋も、逆に慌てて「えっ！聞こえたん…いやいや、おいしかったらええねんで！あたしゃ～おいしかったらええねんで。なんも高いって言うてへんがな、二つやったら２５０円でええんとちゃう」と、変な合意をしてはった
わしゃ、その双方の、変な気遣いの会話がおかしくておかしくて…横で腹を抱えて笑ってました。。