「タイ政府は、来年 最低賃金の引き上げを検討している」という報道がされてから
引き上げの反対派から突っ込みが入り、プラユット政権も ちょっと 慌てていました。
タイ全土の均一最低賃金にしたのは、インラック前政権誕生後の目玉政策の一つでした。それまでは、
県によって個別に最低賃金が設定されていましたが、13年1月から全国一律で日給300バーツが
設定され、北部パヤオ県の日給は、222バーツから、一気に78バーツの賃金上昇があったわけです。
それから約3年据え置かれており、都市部や経済界から見直しを求める声は上がっていましたので、全土
均一の最低賃金制度を廃止して、各県ごとの最低賃金にしたいようです。すると一日300バーツから
都市部はに上がる県、地方では下がる県が出てくることが懸念されます。そこで政府は「現行の300バーツ
から引き下げることはしない」としています。 もし実施されれば結果的には、賃金は上がるでしょうネ。
最低賃金制度廃止の報道について、厚生労働省の担当次官アレック氏が
「決定されたという事実は無い」と慌てて報道を否定していましたけどネ。
今回の発言は、切り下げられる県も出て来るという声に対応したものでしょう。
下記は英字新聞のバンコクポストが出したアセアン諸国の最低賃金(日給)の一覧です。
シンガポール 2,000
ブルネイ 1,800
タイ 300
フィリピン 300
マレーシア 270
インドネシア 230
ミャンマー 110
ベトナム 95
ラオス 80
カンボジア 75 単位はバーツですが、今は約3.8円
こうして比べてみると、タイは300バーツでもかなり高い賃金となっているんですねぇ~
今年の12月にアセアン経済共同体の構築が控えていますが、人件費高騰によりタイ企業の国際
競争力が落ちているのも事実です。その対応として、全国一律ではなく県毎に最低賃金を設定する
仕組みを復活させ、地方の賃金はできるだけ抑制しようという意図が見え隠れしています。
タイでの農業を除く全労働力の約2割が最低賃金で生活をしていると言われていますが、
あのインラック前政権のタイ全土の均一最低賃金制度は、結局 成功したんでしょうかネ。
当初は 大幅な最低賃金の上昇により、深刻なインフレが危惧されましたが、タイ・外国企業が
コスト削減に努め、またインラック政権も法人税軽減など救済措置を行ない、経済への悪影響は
比較的 軽傷に留まったのでしょう。
逆に賃金上昇により、個人消費が伸びた面もありますので、全体的には最低賃金引き上げは経済に
とってプラスになったのかな。調子に乗って、個人ローンが増えたというマイナス面もありますが …
経営者にとっては、最低賃金は深刻な問題です。今年の年末にはどうなっているのか・・・
これはこれで、生活状況のアップと各企業の改善と向上が見られ良かったと思います。
タイ経済の停滞はいろいろな要素が重なっています。
タイとフィリピンが高過ぎて、ベトナムが低過ぎますね。
●下記サイトに、2014年の1人当たりGDPのランキングが出ています。
http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html
シンガポール:56,319$
ブルネイ:36,606$
(日本):36,331$
マレーシア:10,803$
タイランド:5,444$
インドネシア:3,533$
フィリピン:2,865$
ベトナム:2,052$
ラオス:1,692$
ミャンマー:1,221$
カンボジア:1,082$
■タイの最低賃金引き上げ(全国一律)は、現在のタイ経済に深刻な影響を与えています。
労働生産性を無視した、選挙の支持者向けのばら撒き政策は、2014年以降のタイ経済の停滞要因になっています。
インラック政権のばら撒き政策により、タイ国民の家計債務はGDPの80%を超えて、現在は個人消費の減退を招いています。