(移転しました)Saoの猫日和/old

saoの猫日和のURLが変わりました。
⇒ https://blog.goo.ne.jp/saoneko0224

安井かずみのいた時代

2015年05月19日 | 安井かずみのいた時代

たまたま、本屋さんの芸能人本コーナーでみつけた「安井かずみのいた時代」

そういえば加瀬さんが語るところだけをよんだけれど、加瀬さんが亡くなった後でもあり、もう一度読んでみようと、図書館で借りました。

前々から興味があったのが一度目の結婚相手で、すぐ離婚した新田ジョージ氏。いったいどんな人物なのか?読むまでは、新田氏は実業家の大金持ちのボンボン?と思っていたけど、かなりのグローバルな人物。お互いの知性や教養や趣味嗜好などが、合致した恋愛のようですが、長くは続かなかった。

安井さんは今でいう「セレブ」なんぞという安っぽい成金臭がプンプンするような、胡散臭い「セレブ」ではない。本当の意味でのハイソサエティ、知性と教養とセンスを持ち合わせた選民。仕事は紛れもない日本のトップランナー。欲しいものは全部自分で買う。

「シャネルを1着買っただけで、シャネルが好きなんて言わないでちょうだい。洋服ラックの全部がシャネルでシャネルのファンというのよ。」
なんて、カッコいいんでしょ!迷うことのない強い美意識と自意識は、深い知性と教養に裏打ちされ、生き方のスタイルは真似したくても、できないもの。

あまりにカッコ良すぎて、憧れる対象というよりも、はるか遠くから仰ぎ見ることしかできない。しかし、ジュリーの作詞家であったという事実が、安井さんをジュリーファンからすれば、とても近しく思わせる。ジュリーに関しては、安井さんは間違いなく好きだったようだ。

 



やっと全部を読み終えた。

初めは加瀬さんの語るところだけ読めばいいか、そう思っていたがZUZUの生き様、仕事、結婚、再婚など、どこにもない人生は、あの時代の女性の普通の生き方とは、およそかけ離れている。持ち前の才能で休むことなく60~70年代の女性のトップを走り続ける姿が、華麗で爽快で、息もつかせない。加瀬さんの語る一部分だけでなく、全てを読まなければならない、ZUZUの全体像を知りたい。そう思わせた。

そうして、読み終えたあとの気持ちは、世の華やかなZUZUのイメージよりも、ずぅっと重たい。

   
読んで分かったのは、ZUZUの生き方は、決して特別な
女性のことではない。仕事へのスタンス、結婚生活、老いることへの
焦燥感も、更年期も、人並みの女性と同じにあったに違いない。
それは全て、私たち女性皆が通り、悩む道でもあった。
ZUZUの生活の全てが、あまりに豪華な華麗なベールに纏われていたので、
遥か彼方の出来事、生活と思っていた。実はそうではない
華やかな生活の一方で、私達と同じ悩みを持つ、普遍的な女性の
出来事、生き方でもあった。

 

その分野での超一流の人たちが語るZUZUの姿は、紛れもない
人の憧憬を浴びる女王様の姿だ。
若くしてその才能を認められ、歌謡曲の世界を颯爽と疾走し
ヒット曲を増産する姿はとにかくカッコ良く、爽快感を覚えた。
しかし、シンガーソングライター達が登場する、1976年あたりから
作詞家として詞を量産し続けることに、疲れを感じるようになっていったのか。
ジュリーは、阿久悠さんと組むようになった。
そんな時に、シンガーソングライターの走り、代名詞とでも
いうべき離婚直後の加藤和彦に急接近、再婚。
ここから、ZUZUの生き方の第二章が始まる。

ZUZUを語る人たちの目も、この辺りから微妙に違ってきている。

ある人は、加藤に対してZUZUが我が儘いっぱいだった。
ある人は、ZUZUが気の毒なほど 加藤に対して気を使っている。
語る人によって、その見える姿が違う。 

当時の有楽町阪急に飾られた、二人の大きな肖像写真は
日本人の羨望の夫婦のモデルだ。

この二人だからこそ様になる、高価なブランド品に囲まれた
人も羨む豪奢なセレブ生活、深い教養に裏打ちされた自信は、
底の浅い成金セレブとは、確かに基盤が違うのだ。


実は加藤和彦さんとの結婚生活は、お互いにお互いを縛り、縛られ
束縛しあったものであったのかもしれない。
誰もが羨む華やかなセレブ生活は、意識して演出されたもので
本人には加齢による悩み、加藤の浮気などの懊悩もあったようだ。
ZUZUが肺がんになって 亡くなるまでの記述は、正直にいって 
読むのが辛くなるほどだった

吉田拓郎の「ZUZUはジュリーに抱かれたかった」その
あまりに直接的な言葉に、ドギマギしてしまった。
拓郎さんには、1年越しのアプローチでやっとインタビューが実現したという。
ZUZUに対する拓郎さんの視線は、飾ることなくシニカルで正直です。
実際は、作者の島崎今日子さんは、ジュリーにもインタビューを
したかったのでは ないのだろうか?
ジュリーが語れば、それこそ阿久悠と並ぶ作詞者としての
安井かずみの
見せた真の姿を語ることになったでしょうに



ジュリーの名は、加瀬さんが語ったところだけでなく、
ZUZUを語る人達によって その名前が星のように、本全体を彩るように、
本の中に幾つも散りばめられていた。
ジュリーはその時代時代を象徴するアイコンとして、繰り返しその名前が
登場して、これほど本の中にジュリーの名前が出てくるとは
思っていなかった。
溢れる才能、奔放な私生活、恋多き女、時代の女神であった
ZUZUが恋しても、思い願っても、唯一手に入れられなかった
それは、ジュリーの心だったのかもしれないな・・・と思います。

コメント (2)